シリーズ第10弾。神奈川県警刑事部長になった竜崎の元に、有名な純文学系の
小説家・北上輝記が誘拐されたという一報が舞い込んで来た。小説を読まない
竜崎は知らなかったが、県警本部長の佐藤はファンだという。佐藤から、何として
でも北上を無事に保護するように発破をかけられた竜崎だったが、犯人からの
要求が何もないまま時間だけが過ぎて行く。そんな中、北上と知り合いだという
梅林というミステリー作家が県警にやってきた。北上誘拐の情報が世間に知られて
いないにも関わらず、なぜか北上が誘拐されたことを言い当て、推理したと嘯くの
だが――。
今回は誘拐事件。いまひとつ緊迫感のない誘拐事件だなぁと思いながら読んで
いて、多分その理由はアレだからだろうな~と想像していたら、その通りの
展開でした。竜崎も感じていたいくつもの違和感から、なぜその想像が浮かばない
のか、そっちの方が疑問でしたねぇ。もうひとつの事件との関わりも、まぁ、
多分そういうことだろうな、と思っていた通りの真相でしたしね。ま、このシリーズ
に意外性とか求めてないんで、そこはそんなに不満でもないんですけど、それに
しても、展開がスロー過ぎないか、とは思いましたね。警察、これで大丈夫?
と心配になりました^^;素人の梅林に捜査情報漏らしちゃうし。竜崎が関わって
いるのだから、もう少しスピーディに事件解決できそうなものですけどね。
ただ、そのミステリー作家の梅林と竜崎の関係は良かったですね。他人に興味の
ない竜崎が、珍しく友情めいたものを感じていそうだったし。梅林ファンの伊丹
が、彼に会えるよう便宜を図ってあげたりもしているし。仕事に対する姿勢とか信念
信条とかに対するブレなさは相変わらずだけど、今回は全体的に性格が丸くなった
ように感じましたね。それは、伊丹に対する態度にも感じたのですけれど。なんだ
かんだで、竜崎も伊丹のこと好きですよね(笑)。今回一番びっくりしたのは、
竜崎が警察官になったきっかけのエピソード。えぇぇーーー!!そんな理由だった
の!?って思いました。まぁ、確かに竜崎って、昔伊丹にいじめられたこと未だに
根にもってましたもんね。でも、そこまで伊丹のことを意識していたとは思わな
かったんで。でも、本書のラスト読んで、やっぱり竜崎も、伊丹のこと好きなんだな
(今まで、伊丹が竜崎のことが大好きなのは幾度となく感じさせられて来たけれど)、
と再認識させられました。ラスト、刑事部長同士が人気作家を挟んでわちゃわちゃ
やってる所想像すると・・・も、萌える。そのシーンまで書いてほしかったーー。
梅林との友情は、今後も続いて行くといいなーと思いました。
梅林のおかげで、邦彦の大学の件も一件落着して良かったです。しかし、ほんと
問題ばっかり起こす息子だなぁ。せっかく東大まで入ったのにさ。それでなくても、
邦彦のせいで竜崎の出世も遅れたのに。もうちょっと、自分の立場を考えなさいよ、
と言ってやりたくなりました。竜崎も、なんだかんだで息子には甘いよね(呆)。