ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

「それはそれはよく燃えた」(講談社)

会員制読書読書クラブMephisto Readers Club<MRC>で配信(公開)された

ショートショート集の第六弾だそう。タイトルが全部同じ一文(今回の場合は、

「それはそれはよく燃えた」)から始まるというところが各作家さんへの縛り

のようです。このシリーズは、前にも何冊か読んでるのですが、もう六冊も

出ているとは知りませんでした。

同じ一文から始まるとはいえ、その後の展開は、各作家さんによって全く違うのが

面白いところ。作家さんの個性が出ていて興味深いですね。一作が短いショート

ショートなので読みやすいのは間違いないですが、それだけに作品数も多いので、

なかなか記憶に残る作品を書くのは大変かも。

今回の書き出し「それはそれはよく燃えた」だと、やっぱり不穏なお話が多かった

ですね。

今回印象に残った作品は、米澤穂信さんの「燃えろ恋ごころ」。初恋の先輩に

頑張って一晩かけてラブレターを書いて、勇気を出して渡そうと思ったのに、

目の前で先輩がほかの女の子に告白されてうまく行ってしまう。主人公が用無しに

なったラブレターをライターで燃やしてしまうと・・・最後のオチの黒さが米澤

さんらしくてぞっとさせられましたね。こんなことになるなんて・・・っていう。

こわっ。

あとは秋吉理香子さんの「ファンの鑑」。高校時代、美人の美咲のいじめのターゲット

になった同級生の俊子。しかし俊子は、美咲は美しいから仕方がないと言い、

その後アイドルになった彼女をファンとして応援すらしていた。地方のアイドルから

順調にスターの道を進み、ついに美咲は朝ドラの主演に抜擢されるまでになった。

さぞ俊子は嬉しいだろうと思ったのだが――いや、最後のオチの黒さよ。秋吉

さんらしい落としが良かったですね。推し活じゃなくて◯◯。因果応報ですかね。

あと、河村拓哉さんの「比翼」も印象的な作品でしたね。淡々と怖いこと書いて

あるのがね。人間の耳が簡単に引きちぎれるってほんとなの?^^;おばあさん

が主人公に頼みたかったことがかなりエグい。これが耳じゃなかったら微笑ましい

お願いなんだろうけども。私だったら無理だと思いました・・・。筆致が京極

さんっぽいなぁと思いましたね。河村さんご自身も、若い頃の京極さんみたいな

見た目してるしね。着流し着て、手甲とか着けて欲しい(笑)。

あとは似鳥鶏さんの「全滅館の殺人」は、この短ページでよくぞこの題材に挑戦

した、と思いました(笑)。しかし、名探偵のくせにこんな強引な解決法あるかい、

とツッコミ入れたくなりましたけどね^^;

 

こういう作品集だと、他の人とテーマを被らないようにしつつ、自分の個性を

出して書かなきゃいけないから、ほんと難しそう。それでも、各作家さん

それぞれに個性の違う物語を書かれるからすごいです。作家さんの力量が問われる

タイプのアンソロジーだな、と思いましたね。

畑野智美「30代後半、独身、ひとり暮らし」(小学館)

タイトル見て面白そうだったので借りてみました。結婚する前の私は、このタイトル

のまんまの生活だったので、共感出来る部分が多いかな~と思いまして。

でも、主人公が特殊な仕事に就いているのもあって、ほとんど共感出来るところは

なかったですねぇ・・・。

主人公の藤浪夏帆は、SNSの投稿がきっかけで出版社から声をかけてもらい、

エッセイ漫画家としてデビューした。節約や簡単レシピなのである程度の人気を

維持している。しかし、夏帆は、本が売れるにつれて自分の生活が変わって来た

にも関わらず、節約を謳っていることに対して、読者を騙しているのではないかと

いう罪悪感を覚えるようになってきた。そこで、担当編集者に、今の連載を終わら

せて、新しいテーマの作品を書きたいと伝えると、了承してもらえることに。

しかし、希望が通ったにも関わらず、次に何を書きたいのか、自分でもよくわからず

暗中模索する日々が始まった――。

うーむ。なんかもう、ずっともやもやしてたなぁ。出て来る登場人物に好感持てる

人が全然いないし。主人公の夏帆はそこそこ収入が良くて、彼氏もいるから、

タイトルの生活してても、全然悲壮感みたいなのはないんですよね(彼氏はクズ

みたいなやつですけど)。それはそれで、30代後半独身でも楽しく生活出来るって

いうメッセージとも受け取れるんですけど、だからといって幸せそうかというと、

全然そうでもなさそうだし。結婚して子供もいる妹は、裕福な姉に集ろうって気

まんまんで家にやってくるし、脚本家の彼氏は、自分の都合のいい時だけ夏帆の

もとにやってきて好き勝手振る舞って、浮気めいたことも裏でし放題。とはいえ、

その彼氏と付き合うきっかけは、当時彼女がいた彼氏に夏帆の方から猛烈アピール

したからなので、自業自得でもある。結局、悪いことすれば自分に返ってくるって

いい例ですよね。そもそも、夏帆自身も新しい編集者と浮気っぽいことしてるしね。

彼氏が浮気して、あんなに怒っていたくせに、自分も同じことするの?と呆れ果て

ましたね。キスしただけだとか言い訳してたけど。十分浮気じゃんか(怒)。

なんか、出て来る人出てくる人みんな自分勝手で、読んでてイライラしっぱなし

だったな。

こういうテーマのものは好きなのだけど、ちょっと思っていたのとは違って

残念だったかな。

秋吉理香子「月夜行路 Returns」(講談社)

まさかの続編。大好きな作品だったので、とても嬉しかったです。ドラマ化された

影響でしょうね。ドラマ化自体も意外だったけれど(未だに一度も観られていない

ですが^^;)。

昨年、BARのママ・ルナと共に大阪を旅したことで、心残りだった男との過去を

手放し、傷心を癒した涼子は、東京でまた家族との平凡な日常を過ごしていた。

しかし、ふとした瞬間にルナママを思い出し、再び会いたいと思った涼子は、

勇気を出してルナママのBARに会いに行くことに。ママは涼子との再会を喜んで

くれた。その時、ママの元に古いノートパソコンが届く。ママにとっては曰く

ありげなそのパソコンには、パスワードロックがかかっていた。パスワードは

漱石の『吾輩は猫である』に関係ある言葉らしい。どうしてもパソコンを開きたい

様子のママを見かねて、涼子もパスワード探しを手伝うことに。5回間違えると、

ロックがかかってしまうらしく、チャンスは5回きり。二人は、まずは『吾輩は

猫である』の初版本復刻版を扱っているという古書店に向かう。しかし、そこで

店主の男性が血を流して倒れているのを発見して――。

相変わらず行く先々で事件に出会う二人。ママにとって大事な内容が入って

いると思しきパソコンを開ける為、少しづつ手がかりを得ながら、思いつく

パスワードを試して行きます。今度こそ正しいパスワードを探り当てた!と

思いながら入力する度に、エラーが出てしまう。残り回数が少なくなるにつれて、

二度と開けられないのではないか、というドキドキ感がありました。残り回数が

少なくなるにつれて、ママの態度も諦めの境地になって行く。このパソコンは

一体誰のもので、ママに何を伝えたいのか。そこが物語のキモとなります。

ママの過去とも繋がっていて、ママのことがまた少し理解出来たような気持ちに

なりました。今のママになるまでに、たくさんの辛いことを経験して来たことが

伺い知れて、胸が痛みました。普段は明るくふるまっていても、きっと心の底

には、いろいろな後悔や思いが積み重なっていたのだと思う。このパスワード

探しに、涼子が付き合ってあげられて、本当に良かったと思いますね。あの

タイミングで涼子がBARを訪れたことも、何か運命的なものを感じました。最後の

パスワード入力の言葉は、涼子がいなければ思いつけなかった訳ですから。

ママの名探偵としての聡明な推理も、涼子の一言がきっかけで思いつけたり

してますしね。涼子は本当に、ママにとって優秀な助手であり、大切な友人に

なったのだな、と思えて嬉しかったです。前作で、二人の関係がこの先も続くと

いいな、と思っていたので、この作品が読め本当に良かった。ありがとうドラマ化

・・・!(笑)

パソコンに残されていた、ある人からママへのメッセージにもぐっと来ました。

お互いに蟠りはあったのだろうけれど、最後にちゃんとママに思いが伝わって

良かった。

ちょこちょこ出て来る漱石や『吾輩は猫である』の蘊蓄も楽しく読めました。

とはいえ、私自身はこれだけの有名作ですが、読んだことがなかったりするんです

よねぇ。『坊っちゃん』なんかは読んでるけど。有名文学作品はそういうのが

山程あるんですよね。今更読もうとも思わないんだけどね(読めよ)。

今回もママと涼子の関係がとても良かったです。まだまだ続編読みたいぞー。

 

 

 

米澤穂信「倫敦スコーンの謎」(創元推理文庫)

大好きな小市民シリーズ最新作。前作の流れを組んで、新作はてっきり大学生編

になるのかと思いきや、時代設定が少し戻って、今までに語られていなかった

過去の出来事をまとめた作品集って感じでした。外伝とか番外編って感じでも

なく、二人が活躍する本編なのは間違いないと思うけど。でも、◯◯限定が

なくなってるから、やっぱり番外編って位置づけなのかな。二人の高校一年~二年

までの出来事でしたね。四編が収録されています。

まだまだ距離感ある感じ。なんか、初々しいというか。二人の性格的に、初々しい

という形容詞は違和感しかないんだけどさ(苦笑)。

相変わらず、可愛らしいタイトルに反して、ほろ苦いどころかどす黒い内容に

なっているところがこのシリーズならでは。やっぱり、この二人の互恵関係が

いいですね。君たち、ほんとに高校生かい?とツッコミたくなったりもするけど

(小佐内さん、見た目は小学生ですけどw)。

では、各作品の感想を。

 

『桑港クッキーの謎』

最近大きな美術展で賞を獲った芸術家の縞大我氏は、僕たちが通う舟戸高校

出身だった。その縞氏が在校時代に描いた作品が、同級生の堂島健吾によって

発見された。しかし、その作品はある既存の画家の模写であるにも関わらず、

過去に展覧会に出品されていることがわかった。その作品は盗作なのか?健吾は、

僕に、以前絵の謎を解いた小佐内のことを紹介して欲しいと頼んで来たが――。

盗作かどうかの真相には、なるほど、と思わされましたね。しかし、当時誰もこの

事実に気づかなかったってのがね。当時の展覧会の審査員が気づかなかったのは

問題だったのでは^^;本人はちゃんと言い分を用意してた訳だけどさ。

 

『羅馬ジェラートの謎』

小佐内さんとショッピングモールにジェラートを食べに行った。二階のフード

コートでジェラートを食べていると、僕は一階のフロアに座るスーツの女性に

目が行った。彼女もまた、僕たちが食べているジェラート屋さんのジェラートを

買ったようだ。しかし、なぜか僕たちが話しながらジェラートを食べている間中、

自分の前に置いてあるジェラートに全く手をつけようとしなかった。一体なぜ、

彼女はジェラートを食べないのか?

そんな長い間ジェラートに手をつけなかったら、どんどん溶けて行くんじゃないの?

って思ったんですけど・・・こういうことでしたか。小佐内さんが待ち合わせに

遅れた件は絶対後で伏線になるだろうな、と思ってたんですが、こういう風に

繋がるとは思いませんでしたね。

私も、イタリア行った時、一番美味しかった食べ物は何かと聞かれたら、カプリ島

で食べたジェラートって答えますね。あんなに美味しいジェラートは後にも先にも

食べたことがないです。ああ、また行きたいなぁ。

 

『倫敦スコーンの謎』

僕たちの学年で調理実習があった。メニューは、サンドイッチとカナッペとスコーン

だった。小佐内さんのクラスでも同じように実習があった。しかし、小佐内さんの

班のスコーンが、なぜか生焼けで失敗してしまったという。スコーン担当の子は、

スコーン作りに自信があるといって、一人で担当したという。小佐内さんが作り方

を見ていた限り、失敗する要素はなにもなかったようなのに。彼女はなぜ、スコーン

作りを失敗してしまったのか――?

スコーン担当の沢海さん、言動にちょいちょい引っかかるところがあって、好感

持てませんでした。しかし、高校の調理実習でスコーンって、結構ハードル高くない?

いや、作り方はそんなに難しくはないと思うけどさ。でも、一番ムカついたのは、

何ひとつ作業しなかったくせに、失敗したことを責め立てた青田川だったけどね。

失敗した理由が二人の推理によって少しづつ明らかになって行くところは、やっぱり

上手いなーと思いましたね。保冷ボックスのこととか、細かい伏線がきっちり張って

あって、さすがだな、と思わされました。

読んでて、久しぶりに自分もスコーン焼きたくなっちゃいました。バターめちゃくちゃ

使うから、コスパ良くないんだけどね^^;ちなみに、私はそんなに生地寝かせ

ないで作りますね(ちょっとだけ冷蔵庫に入れたりはするけど)。

 

『維納ザッハトルテの謎』

船戸高出身の造形作家・縞大我の講演会が開かれることになった。しかし、学校宛に、

盗作作家の縞は講演会に相応しくないから中止しろという脅迫状が届いたという

噂が、学園内のあちこちで囁かれるようになっていた。講演会の二週間前のある日、

僕はクラスメートの島井さんと共に、美術の甲村先生から呼び出された。講演会で

生徒に見せて欲しいと送られて来た、縞大我のオブジェを運んで欲しいというのだ。

その場には、小佐内さんのクラスメートの沢海さんと青田川くんもいた。四人で

言われた通りオブジェを運んだが、講演会の前日、オブジェにヒビが入っているのを

発見して――。

学校に脅迫状が届いたかもしれないと聞いて、何か起きないか期待する小鳩くんの

黒さにちょっと引きました(苦笑)。そんな性格だったっけ?^^;登場人物みんな、

腹の中にどす黒いものを抱えてる人ばかりでしたねぇ・・・。沢海さんも、青田川

くんも、甲村先生も。縞大我もかな。主役の二人は言わずもがなですが。こんな

人間ばかりの学校やだよー^^;沢海さんの言動には一番引いたけども。思い込み

激しい人間のやることは怖いよ・・・。

 

各タイトルに出て来る都市の和名は勉強になりました。初めてみたやつもあったなぁ。

維納は知らなかったです。他は、倫敦以外は見たことあるくらいだったしね。

出て来るスイーツは今回も美味しそうだった。小佐内さんがスイーツ食べる時だけは

見た目通りの可愛い少女になるところに萌え萌え。中身は正反対だとしてもね。

やっぱり、この二人は最強にして最恐ですね。

 

 

 

 

平山夢明☓背筋「最恐ホラー 呪われた図書館」(講談社)

平山さんと今話題の背筋さんがタッグを組んだホラーということで、基本ホラーは

苦手だけど借りてみました。

調べてみたところ、一つのテーマに二人の作家が寄稿するシリーズの第一弾

だそう。全部で6シリーズ出るみたい(これは第一弾らしく、他の5作が出て

いるのかは謎)。

めっちゃくちゃ薄い。一作30ページ程度の短編が二作入ってるだけだから、

正味一時間くらいで読めちゃいます。これで900円取るの?図書館本だから

いいけど、買った人怒らないかな^^;この内容で900円払うくらいなら、

文庫買った方がいいと思っちゃうなぁ・・・。

しかも、最恐ホラーってタイトルほどには、怖くはなかったような。いや、

どっちも怖い話しなのは間違いないのだけども。記憶に残るほどの怖さかと

言われると・・・多分、即行で忘れちゃいそうな内容だったかも。

一応、タイトル通り、図書館が舞台のホラーってところが共通点ではあるかな。

背筋さんの方は、割と正統派なホラー短編かなぁ。日常生活に、突如笑う女が

入って来る辺りは、確かにぞくっとさせられるものがあった。

けどまぁ、それ以上でもそれ以下でもない作品と言えばそれまでというか。

問題は平山さんの方。のっけから、文章がアナグラムのように崩れていて、元の

文章は類推出来るものの、めちゃくちゃ読んでいて気持ち悪かった。突然<7>

から始まる章立て(その後、<8><9>と続く)にも面食らわされたし。

まぁ、読み進めて行くと、ぞっとする展開になって行くのだけど。一度読んだ

だけではちょっと意味がわからなくて、この記事書くにあたってざっと読み返して、

やっと物語全体の意味がなんとなくわかりました。美味しいアルバイトなんて、

絶対裏があると思った方がいいですね・・・。こんな気持ち悪い話が書ける平山

さんはやっぱり天才なのかも・・・と二回読んで改めて気付かされました^^;;

この形であと5冊出る(出てる?)のか。正直、30ページ×12編の文庫

アンソロジーで良かったのでは(あるいは、半分づつで上下巻にするか)。

全巻揃える人いるのかなぁ。

 

 

雨井湖音「僕たちの青春と君だけが見た謎」(東京創元社)

仙台の高等支援学校を舞台にした『僕たちの青春はちょっとだけ特別』のシリーズ

第二弾。前作は結構好評だったみたいですね。

前作同様、青崎架月の元に学園内で起きた謎が持ち込まれ、周りの友人や先輩や

教師の手を借りながら、その謎を解明していく。生徒たちはみんな、何らかの

障害を抱えた子ばかりなので、謎の解明は当然ながら一筋縄では行きません。

探偵役の架月自身でさえそうなのですから。周りの人間の感情の機微がわからず、

共感が出来ないため、しょっ中誰かに怒られたり注意されたりしている。それでも、

学園生活を続けるうちに周りの人間とも親しくなり、少しづつ成長している節が

伺えますね。

ただ、周りの子たちもみんな、会話の受け答えがちょっと普通とは違ったりするので、

正直、今回も読んでいてイライラさせられることも多かったです。禅問答を聞いて

いる時のようなわからなさというか。会話同士が噛み合っていないというか。

そういう文章を延々と読まなければならないのは、ちょっと精神的にしんどい。

障害を持つ人間への理解や配慮が足りないと言われてしまえばそれまでなのだけど、

自分が理解出来ないものを読まされるのって、言葉が通じない人間同士の会話を

読んでいるようで、結構ストレスなんですよ・・・。それも個性と受け入れて読む

べき作品なのはわかっているのですけどもね。

出て来る謎も、普通の高校生だったらこういうトラブルにはならないだろう、という

ものばかり。例えば一話目の、コンビで漫画を描くことになった作画担当の沙耶と

原作担当の拓海のトラブルなんかもそう。細密で見事な水族館のイラストを描いた

沙耶の絵を見た拓海が告げたのは、『背景を黒く塗りつぶして』という非情なもの

だった。なぜ、拓海はそんなことを言ったのか?という謎に架月が挑むという内容。

普通の子だったら、黒く塗りつぶして欲しい理由をちゃんと相手に告げることが

出来て、こんなこじれたりしないんですよね。でも、拓海はそれを説明したく

ないし、沙耶の方はなぜかを説明して欲しいと相手に告げることが出来ない。

普通の人なら簡単な意思の疎通が出来ないから、トラブルに発展してしまう。それを

解き明かすのも障害を抱えた架月なのだから、そりゃーもう、こじれを直すのは

大変です。でも、架月は基本的には頭が良い子なので、持ち前のひらめきや真面目さ

でその難問を解明して行けてしまう。架月が一つ謎を解く度に、少しづつ周りの

人間の感情や行動を学んで行って、成長を遂げて行くところが、このシリーズの

読みどころでしょうね。

それぞれの人物の障害がいまいちはっきり書かれていないので(由芽のように

断定的に書かれている子もいますが)、なかなかそれぞれのキャラの性格が

掴めなくて、戸惑うことも多かったです。そこら辺は、誰がどんな障害を持って

いるのか、はっきり書いてもらった方が、その子の言動を理解しやすいと思う

んだけどな。そういう点で、由芽なんかの個性はわかりやすいから。一番

わからないのは、前作でもそうだったけど、優香。優香の障害って一体何なのかな。

発達系とかそっちなのか。一見、普通の子にしか思えないんだよなぁ。確か

前作でも同じように感じた覚えがある。みんなから慕われていて、アイドルのように

可愛いとチヤホヤされていて。普通の学校のマドンナと変わりない。一体どこが

『特殊』なのか。誰に対しても親切だしね。

二話目は、由芽のスクラップする予定だった新聞が紛失したのはなぜかという謎。

新聞を盗んだ犯人はすぐにわかってしまうけど、その理由にはなるほど、と思わせ

られましたね。基本的に、この学園で起きる事件は、悪い感情からのものはない

んですよね。みんな、それぞれやった人間にとっての『正しさ』がある。そこが、

普通の青春小説とは違うところかな、と思いますね。

三話目は、実習生が来たことに喜んでいた深谷が、なぜかある時から態度を変えて

しまった。それはなぜか、という謎。これは、予備知識がなければ解けない謎

でしたね。介護という言葉の持つ影響について、考えさせられました。

 

特殊な性格の子供たちばかりが出て来るお話で、なかなか彼らの感情を理解するのは

大変かなと感じます。

ただ、その特殊な世界に敢えて切り込んだという意味で、他にはない個性を持った

シリーズなのは間違いないところでしょうね。

作者の雨井さんが実際に高等支援学校の教員をされているということで、とても

学園内の描写はとてもリアルだと思います。

今後は、普通の中高生たちの青春ミステリーなんかも読んでみたいですね。

 

 

信国遥「未館成の殺人」(光文社)

初めましての作家さん。なんでこれを借りようと思ったのか、はっきりと覚えてない

のですが、確か好きな読書系YouTubeチャンネルの方がオススメしていたからじゃ

なかったかな。もう一冊本格ミステリ系の新人の方の作品予約してるから、そっち

だったかもしれないけど。

孤島☓連続殺人☓未完の館ということで、まさに好みど真ん中って感じの設定に

わくわくしながら読み始めたのですが・・・う、ううーーーーむ。読み終えて、

 

は?

 

という感想しか・・・。X大学のミステリー研究会のメンバーが、有名建築家が

失踪したという伊豆諸島とある孤島に行って夏合宿を計画。しかし当日、学生たちが

乗ってた船が島に到着した直後になぜか突然炎上してしまい、水も食料もほとんど

ない状態で取り残されて、サバイバルしなきゃいけない中で連続殺人が起きる・・・

って内容なんですが(長い)。

なんか、要所要所でツッコミ所が満載というか。納得が行かない要素が出てくると

言うか。ずっとモヤモヤしたまま読み進めていて、最後の展開で最高にモヤモヤ

して終わった・・・って感じだった。

出て来る登場人物も好感持てる人間がほとんど出て来ないし、最初主要登場人物

だと思った人物が、ある理由から孤島サバイバルが始まる前に退場しちゃうし。

そんな退場の仕方だったのに、極限状態で仕方がないとはいえ、誰もそのことを

悲しんだりしないし。同じサークルの仲間だったじゃん・・・。まぁ、確かに、

次第に自分が死ぬか生きるかって極限状態に陥れられる訳だから、他人を構ってる

余裕がないのはわかるけど・・・。

時間が経つにつれて、飢餓と喉の渇きで人間関係が殺伐として行くところは、

リアルといえばリアルだったけど。人間の本性が見えて来るというか。でも、途中

からみんな水分摂ることだけに執着してて、飢えに関してはあまり触れられて

いなかったのがちょっと不自然に感じたのですけど。極限状態に置かれると、

とにかく水分のことしか考えられなくなっちゃうものなんですかね。一度だけ、

得体の知れない貝食べただけで、何十時間も食べ物のことを考えずにいられる

ものなのかなぁ。ま、その中で殺人も起きてる訳だから、それどころじゃないのか。

一番ツッコミ入れたくなったのは、犯人の動機だなぁ。何だソレ、と思いました。

でも、同じような動機の作品、どこかで以前読んだことあるんですよね。今回の

場合は、そんな理由で何人も人殺せるってのがまず信じられなかったですけど

ね・・・。

あと館の秘密もね。ミステリー小説として、それは反則なのでは・・・と思って

しまったよね。そんなのあったら何でもありじゃん、みたいな(苦笑)。

で、生き残りが最後の二人になった後の展開がねぇ。ネタバレなしで感想書くの

難しいなぁ。なんなの、この二人って思いました。はい。最後、作者としては

きれいに終わらせて満足って感じなのかな。完全に読者置いてけぼりって印象しか

持てなかったけどね。結局この後助けは来るのか来ないのか。リドルストーリー

みたいな終わらせ方でしたけど、助けが来ても来なくても地獄しか待ってないよね。

だったら来ないままの方がこの二人にとってはいいのかもね。

他にもちょいちょいツッコミ所があったと思うけど、忘れちゃった^^;とにかく、

最後までモヤモヤしたままでしたね。ちょっと自分的には残念な作品でした。