ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

舞城王太郎/「好き好き大好き超愛してる。」/講談社刊

日本ミステリ界に新風を巻き起こした天才異端児・舞城王太郎さんの「好き好き大好き超愛してる。」。

病気で死に逝く恋人・柿緒への愛情と祈りの物語。同時収録「ドリルホール・イン・マイ・ブレイン」。

「愛は祈りだ。僕は祈る」冒頭のこの台詞が全てを物語っています。巷では舞城版「世界の中心で愛を叫ぶ」と言われているらしいのですが・・・私はこの「世界の~」を全くもって評価していないので(その年に読んだワースト1でした)、舞城さんと比べるのはどうかな・・・と思ってしまいます。

相変わらずの破綻した文章。それでも、どうしてこんなに胸に響くのでしょうね。舞城さんの文章は、文体はともかく、非常にシンプルだと思う。特に表題作の「好き好き~」は、伝えたいことをストレートに
言葉にしている純粋な恋愛小説。恋人への愛情、伝えたい気持ちをこれでもかとぶつけてくる。ここまでやられると、普通の小説だったらひいてしまうかもしれません。でも、舞城さん独特の文体ならばこれが想像以上にぐっと来るのですよ。普通に考えたらとんでもない文章なんですけど、何故かついつい読み進めてしまう、めくるめくスピード感。

それにしても、書評を書くのが非常に難しい作家ですね・・・。
とにかく、理屈じゃない。面白いものは面白い。
確かに、作品によっては「????」なものもありますが、それでも「まぁ、舞城さんだしね」と
納得してしまうから不思議。一度読んだら病みつきになる。それが舞城ワールド。
しかし、世界に入っていけない人は門前払いを食らうでしょう。

そろそろ奈津川サーガは続編出ないのでしょうかね。行きつくとこまで行っちゃってるからな・・・。
舞城さんは書きたいことがいろいろあって、もうミステリなんかどうでもいいって感じてらっしゃる
気がしてしょうがないのですけど。
煙か土か食い物」みたいな素晴らしいミステリをまた書いて欲しいものです。