ミステリ読書録

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大倉崇裕/「丑三つ時から夜明けまで」/光文社刊

「季刊落語」シリーズで出世した大倉崇裕さんの意欲作「丑三つ時から夜明けまで」。

闇金融「藤倉ワイド」の社長・藤倉富士衛門が地下5メートルにある書斎で殺された。現場の数々の状況は密室であることを示している。この事件の犯人は幽霊でしかありえない!?捜査は一般には知られていない警視庁の幽霊研究チーム「捜査五課」に移行する。果たして、事件の真相は!?

数々の不可能犯罪の犯人の正体は幽霊であると認めた警視庁は、幽霊研究チーム「捜査五課」を設置し、
霊感のある刑事を集めて、捜査に乗り出す、という奇抜な設定。ただし、捜査五課単独での捜査は許されておらず、人間の犯人を担当する捜査一課との合同捜査になるのだが、この捜査一課が幽霊の存在を否定していて、五課とは常に仲が悪い。この辺りの五課と一課のつばぜり合いは面白かったです。

ただ、せっかくの本格トリックのオチを全て幽霊にしちゃうっていうのはどうなのかなぁと思いました。別に普通の本格作品として世に出しても良かったのでは・・・と。
そこが面白い所だといわれてしまうと、それはそうなんですけど。
なんとなく消化不良な感じは受けました。密室なのは、幽霊が扉を通り抜けたせいだとか言われて
しまうとねー。なんか、推理小説自体を否定されてる気分というか。
出てくるトリックなんかはなかなか面白いので、ちょっと勿体ない気がしました。

あと、捜査五課のメンバーにはもう一ひねり欲しかった所。なんとなく類型的なキャラって感じが
したので。もうちょっと強烈な個性のキャラを入れて欲しかった。
捜査一課のメンバーの方がキャラ的には面白かったかも。捜査一課所属なのに霊感があって、何故か
いつも五課のメンバーに見込まれてしまう主人公とか。

大倉さんは、やっぱり落語シリーズとかの方が好きですね。巻き込まれ型のお人よしキャラ・白戸
が活躍する「ツール&ストール」もお薦め。白戸のお人よし加減が妙に微笑ましくていいのですよ。
これも続編希望してるのですがね(続編希望が多いな・・・)。