ミステリ読書録

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佐藤友哉/「フリッカー式 鏡公彦にうってつけの殺人」/講談社ノベルス刊

第21回メフィスト賞受賞作、佐藤友哉さんの「フリッカー式 鏡公彦にうってつけの殺人」。

ある日突然、最愛の妹が死んだ。家族は自殺だったと言う。そして、壊れた僕の前に現れた奇妙な
男。その男が持って来たのは1本のビデオ。そこには3人のオヤジたちに陵辱される妹が・・・。
オヤジたちには娘がいるという。僕は復讐の為、彼女たちを捕獲することにした。

・・・えーと、久しぶりに読み続けるのが辛い小説に出会いました。な、なんじゃこりゃ。
ここまでひどい文章と構成を書き上げるのもすごいが、もっとすごいのはこの小説を受賞
させてしまうメフィスト賞ですよ。以前からメフィスト賞の選考基準には疑問を持っていました
が、選考委員はこの作品が世間にどう評価されると思って選んだんでしょうか。確かに
壊れっぷりは浦賀さんに触発され、破綻した文章は舞城さんを踏襲しているような感じですが、
全く佐藤さん個人のオリジナリティというものが感じられなかった。

それでも後半部分は勢いで一気読みしたのですが、結局オチもどっかから借りて来たような
ものでしかなく、全く新鮮味がなかった。若さというだけでは片付けられない力量不足。
久しぶりに手をつけたメフィスト賞がこれだったので、ちょっと当分メフィスト賞は信用
できそうもないです・・・。初期~中期にかけてはいい作品もたくさんあって未だに大好きな
作家もいるのですが、年々質を下げている気がして、最近はなかなか手に取れません。

とにかく、文章の下手さに本を投げそうになった作品は久しぶり。デビュー作とは言え、この
文章の不安定さは何だろう・・・どっかから借りて来たような比喩表現も・・・。
この後何作も出していらっしゃるのだから、少しは上達してるでしょうけど。
「壊れる」という単語の連発にも辟易しました。「壊れた世界」感を演出したいのはわかるのです
が、それがいまひとつカラ回りのような。
この方、その後出版されたある作品で「筆を折る」宣言をしたそうで、あとがきで延々と自分の小説が
世間に理解されない愚痴を書き連ねたそうなのですが、こんなレベルの作品書いてて、世間が認めるかー!!とつっこみたくなりました(苦笑)。

佐藤さんファンの方、本当に申し訳ありません。この壊れた感がお好みの方もきっとたくさん
いらっしゃると思うので、これはあくまでも私個人の受け取り方と笑って見過ごしてやって
下さいませ。

しかし、この作品、法月さんが絶賛したんですって!?まじですかー・・・。