北森鴻さんの蓮丈那智シリーズ3作目「写楽・考」。
古文書の調査に赴いた屋敷では、当主が行方不明になっていた。盗難の痕跡もなく事件性もない
ことで、単なる家出かと思われたその矢先に、一行は古文書が隠し持っている重要な秘密
「謎の画家」に行きあたるのだが――表題作他、3篇を収録。
蓮丈那智シリーズ3作目です。民俗学の薀蓄は正直難しい部分もあるのですが、民俗学と
ミステリを上手く融合させて、非常に読み応えのある作品に仕上がっています。
特に表題作は秀逸。学術的見地からするとあり得ないというオチなのかもしれませんが、
小説だと思って読めば、純粋に驚けるし、楽しめました。
この「写楽・考」は連載時には題名が違ったそうで、単行本化するに当たって改題された
ようです。そして、改題についてはかなりの物議をかもしたようで。確かにラストのオチを
読むにあたって、この題名ってどうなんだ?とも思うのですが・・・。変えない方がインパクト
あったかもしれないなぁ。ラストまで読んで題名に納得、というパターンもありますけど。
那智のキャラは実はあまり好きではないのですが、三國とセットだとまぁいいかなと思って
読んでいます。三國は完全に女王様の尻にしかれている感じですが(といっても、この二人は
恋愛関係にはありません)、実は那智の方が相当三國に弱いのだというのがだんだんわかって
来た気がします。
たまに出てくる、陶子さんとの関係は好き。認め合ってる女性同士の、さらっとした
信頼関係。かっこいいなーと思う。
北森さんの作品はいつも私の好みと合っていて、取り上げる題材も文章も大好きです。
刊行作品は全て読んでいますが、ダメだった作品は2~3作しかありません。
この連丈シリーズはキャラクターがダメという話も聞きますね。それは納得。
一般的には冬狐堂シリーズの方が人気あるのかな。私もどちらかというと狐さんの方が
好みですが。ただ、こちらはこちらで民俗学というジャンルの奥深さを感じられて、勉強になる
のですけどね(ほとんど理解できてないのが悲しいところですが)。
それぞれのシリーズが微妙にリンクしてるのも嬉しい。かなりいろんな作品が重複して
いるので、気をつけて読んでみるとなかなか楽しめるのでは。
そろそろ正規の冬狐堂シリーズも読みたい所。
早く新作が出ないかなぁ、といつも心待ちにしている作家の一人なのであります。