鬼才、西澤保彦さんの「フェティッシュ」。
触れれば死ぬ。特異体質を持った謎の美少年を巡る殺人の罠。数々の女性が被害者となり、
不可解な謎の死を遂げる。事件を追う刑事は、被害者のある共通点に思いあたり、捜査を
開始する。果たして、仕掛けるのは誰なのか。美少年の正体とは?欲望と狂気が渦巻く迷宮世界。
次々と視点が変わり、それぞれ全く違った方向から事件が進んで行くので、一体最後は
どういう風に終着するのか、読んでいる途中全くわかりませんでした。仕掛けは大変面白かった
のですが・・・いかんせん、後味が悪すぎる・・・。まぁ、これが西澤流とも言える訳ですが。
人間の狂気とフェティシズムが全面に詰め込まれた一冊。それぞれのフェチの終着が全て美少年
<クルミ>に行きつき、最終的には<クルミ>自体がフェチとなり、自らを狂気に陥れてゆく・・・その
過程は酷く生々しく、エグかったです。結局最後まで<クルミ>の正体は明かされないまま、
不自然な形で物語は終わります。特異体質の謎もそのまま。そういう病気もあるかもしれない、
というようなニュアンスで、後は読者に委ねるという感じ。
私は一番気になったのは犯人がこうした殺人を行うに至った経緯ですね。ネタバレになるんで
あんまり書けないのですが・・・あまりにも常軌を逸しているような・・・まさに究極の
「フェテュッシュ」といえなくもないですが。
ちなみに冒頭に書かれている‘フェティッシュ’の意味を引用すると、「物神、呪物、盲目的
崇拝物、迷信の対象、崇拝愛の対象物」だそうです。
フェチの為に、人間ここまで狂えるのか、というサイコサスペンス風ミステリ。
究極の鬼畜小説とも言えるのかも。