ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

氷川透/「逆さに咲いた薔薇」/光文社カッパノベルス刊

メフィスト賞でデビューした氷川透さんの新境地作「逆さに咲いた薔薇」。

都内で、左足の小指を切り落とされ、赤い靴下を履かされた死体が連続して発見された。警視庁捜査一課の刑事・椎名梨枝は、部下の鳥山と共に捜査に乗り出すが、一向に捜査に進展は見られない。行き詰った
椎名は友人の祐天寺美帆のマンションを訪れる。彼女はその相貌からは想像できないような鋭い視線で事件を解き明かす才能を持っているのだ。安楽椅子探偵・祐天寺美帆の推理とは?

う~ん、これは・・・まず、それぞれの登場人物がいまひとつ書き込まれておらず、印象が薄い。
特に主人公。刑事なのに、他人任せの捜査に加え、犯人がわからず号泣する。‘女刑事’と
しての株をあげるどころか、女性蔑視の警察内部の考え方を助長するだけのような行動ばかり。
それなのに、警察内部の人間は彼女に甘い。よくわからないです。リアリティがないというか。
最終的には推理は他人にしてもらい、美味しいところは自分が持って行く。まぁ、美帆が犯人と
直接向き合う訳にはいかないから仕方ないにしても、この展開はどうなのかなぁと思いました。
テコンドーに関するエピソードもラストは拍子抜けだし。な、なんだ、それ。そんなオチかよ!
ってつっこみたくなりました(苦笑)。

氷川さんの小説は得てしてこういう、キャラクターに好感が持てない作品が多いのですよね。
トリックなんかは面白いので、その辺は目をつぶって読んでる部分もあるのですが・・・。
しかし、今回の謎解きはダメですねー。全く整合性がなく、説得力もない。
正直面白くなかった。無駄な設定も多いし。せめて猟奇殺人の説明だけは・・・と思って
ページをめくったのですが、何の意外性もなく、「え!そんな理由?」って感じでしたし。
謎解きをする祐天寺も強烈なキャラの割りに出番も少なく、何故彼女を探偵役に据えたのか
疑問。全てがちぐはぐな印象でした。

久しぶりに読んだのですけどね、氷川さん。講談社の氷川シリーズは全部読んでますが、
ここまでひどい作品はなかったように思いますけど・・・。次作が「間に合わなかった寒椿」
という作品らしいので、シリーズの続編かと思われますが、ちょっと読むのは躊躇しちゃうなぁ。
とりあえず、主人公の椎名にはもうちょっと成長してもらいたいですね。