ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

黒田研二/「カンニング少女」/文藝春秋刊

第16回メフィスト賞受賞でデビューした黒田研二さんの「カンニング少女」。

私立K高校3年の天童玲美は、不慮の事故で亡くなった姉の死の真相を知る為に超難関の私立大・
馳田学院に入学する決意をする。しかし、今の玲美の学力では到底入ることは出来ない。彼女の
決意を聞いた同級生の愛香・杜夫・隼人の3人が参謀役となり、カンニングによる入試突破
を実行すべく動き出した。果たして、玲美は無事カンニングで入試を突破出来るのか?そして
姉の死の真相とは・・・?

引っ込み思案の一人の少女が、カンニングという大冒険を通して過去の自分と向き合い、
友情を確かめあい、人間として成長して行くという変化球青春ストーリー。
言ってみればカンニングは不正行為で、絶対にしてはいけないことなのですが、彼らに関しては
応援してあげたくなってしまいます。中で出てくるカンニング方法に関しては、実際可能かどうかと
言われると、かなり怪しいです。
そもそも高校生があの短時間で開発出来るものなのかどうかとか、現代のコピー機がどんなに
優れていても、○○○○の代わりを作れるのかとか(採点方式が機械だったら完全にOUT)、
突っ込み所は満載だったのですが、その辺のことは小説として目をつぶれば、非常に楽しめた作品
です。
ラストのオチに関しては、人によっては後味が悪いと取る方もいらっしゃるようですが、
私は主人公にとっては良い終わり方だったと言えるのではないかと思いました。まぁ、本当の
真実を主人公が知る時が来たら、彼女にとっては辛い現実になるのかもしれませんけれど。
彼女のカンニングが本当に成功したかどうかははっきりしないままなので、読者に委ねられた
形なのですが、あの展開ならばおそらく・・・ということなのでしょうね。
玲美と椿井君のその後の展開も気になりますね。
そういえば、中で出てくる「結婚なんかしたくない」の一文にはにやりとしてしまいました。
なにげに宣伝?(苦笑)

黒田さんは作品ごとにいろいろ作風を変えていて、引き出しの多い作家さんですね。
全体を通して仕掛けがあるという点ではだいたい共通してるのですが。構成力のある方だなぁ
といつも感心します。
あとがきをあまり書かれないという印象なので、この方も人となりが謎なのですが、
かなりの変人(変態?^^;)でいらっしゃるとか・・・。作品からは想像できませんけど(苦笑)。
東野さんのエッセイにスキーがプロ並とも書いてありましたっけ。

ともかく、次はどんな意外な作品を仕掛けてくるのか、楽しみな作家の一人なのです。