ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

乙一/「小生物語」/幻冬舎刊

奇才・乙一さんのHP上の日記を集めた「小生物語」。

乙一氏本人のHP及び、Webマガジン『幻冬舎』掲載分を加筆・修正したエッセイ集。

本人曰く、「買わない方が良い本」。小心者の乙一さんらしいそんな前書きで始まる本書。
日記形式で日々のことが綴られていますが、嘘とほんとの境界のわからない、とても
乙一さんらしい文章の数々。実のお姉さんが名づけた「嘘日記」というのが一番適した
言葉でしょう。乙一さんの小説を読んだことがある方は、らしいな、と納得するでしょうが、
いきなり本書から入られた方は「なんじゃこりゃ!意味不明じゃないか!」と憤慨されるかも
しれません。乙一ファンならば、そのくだらなさににやりとするはず。

中古で買った(7千円で)ソファーにいつも座っている少年のエピソードなどは、実に
乙一さんらしい発想ですね。この少年に関しては何度も登場しますが、ラストにちゃんと
オチがついてる所がにくい。
ただ、すべてが嘘という訳ではなさそうで、実話らしき挿話もちらほら。上京した一番の
理由がラジオがよく聴けるからって・・・そんな理由かよ!みたいな(苦笑)伊集院光氏の
ラジオは私も結構聴いていましたけどね(笑)。
あとがきなどでも感じるのですが、乙一さんという人はほんとに謙虚というか、小心者というか・・・
人気作家とは思えない雰囲気が漂ってますね。こんなに自分を卑下する作家も珍しいですよ。
京極堂シリーズの関口君かいな・・・って彼はほんとに売れない作家だから仕方ないですが(苦笑)。

以前爆笑問題の深夜番組に乙一さんがゲストで出ているのを見たことがあるのですが、私はすごく
好みの風貌でした。インテリっぽいというか。やっぱりとても控えめな感じでしたね。ちょっと
爆笑の太田さんと同じ空気があったような・・・。二人のやりとりはとても面白かった。
人気作家となった乙一さんですが、多数ある原稿依頼をかなりの確率で断っているようですね
(おそらくこの部分は真実かと思われます)。そんな選り好みをせずに、いろいろ書いて欲しい
なぁと思うのは・・・やっぱりファンのわがままでしょうかね。