ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

篠田真由美/「聖女の塔 建築探偵桜井京介」/講談社ノベルス

ゴシックミステリの名手・篠田真由美さんの「聖女の塔 建築探偵桜井京介」。

長崎県の孤島・波手島で複数の女性の焼死体が発見された。県警の見解では、宗教的理由による
集団自殺で、事件性はないというものだった。しかし、事件性を疑う私立探偵に頼まれ、
桜井京介は共に現地へ向かうことに。一方蒼は劇団時代の知人・川島実樹にせがまれ、
実樹の友人が入信したまま戻らないというカルト教団の本部を訪れる。京介と蒼、二人に忍び寄る
悪意の罠。京介は真相を見破り、蒼の窮地を救うことが出来るのか!?建築探偵シリーズ第16弾。

建築探偵シリーズもいよいよ佳境にさしかかって来たようです。あとがき曰く、本編はあと3作を
残すのみだとか。しょっ中死にそうな目に遭い、怪我ばかりしている京介が一体どんな最後を
迎えるのか、全く予想がつきませんが・・・蒼との関係がどういう終着を迎えるのかも。
お互いにこれ以上ない位に想い合い(変な意味ではありません・・・多分)、唯一無二の
存在であるにも関わらず、どちらも相手がいつか自分の前から去って行くだろうという予感を
常に感じている二人。なんとかこのままの関係で幸せになって欲しいなぁと思うのですが、
なんとなくその予感が当たるような気もしますね。今回のラストでもラブラブぶりを周囲に
撒き散らしてましたが・・・(いや、だからそっち系の小説では・・・ってこの紹介が
いけないのかー^^;しかし、篠田さんは絶対狙って書いてると思う)。

正直このシリーズにはあまりミステリとしての謎解きはそんなに期待していません。どちらかと
言うとキャラの成長物語として楽しんでいる部分が多いです。なので、多少推理に無理があっても、
まぁいっか、と目をつぶってます。今回も全体的にはなかなか練られているのですが、いくつか
疑問点が。文章も割と堅めなので、キャラが好きになれないと入っていけないかも。本作では特に
カルト教団だのといった宗教関係の説明で中だるみした感じがありましたし。いつもはそれが
建築関係だったりするんですけど(苦笑)。毎回いろんな国の建築物が出てくるので、そっち方面が
お好きな方には良いかもしれませんが。
しかも、このシリーズ、作者があとがきでも触れていますが、本編の12作を時系列順に読まないと
内容が掴み辛いという困った性質を持ってます。事件そのものは1冊づつ完結しているのですが。
なので、もしこれから読まれるという方は、なるべく1作目から順番に読まれることをお薦め
します。

といっても、実は私自身は始めの5作はめちゃくちゃな順番で読んでしまいました。
何せ、蒼の出生の秘密を描いた「原罪の庭」を2番目あたりに読んでしまったので・・・最悪でした。
本作から読まれるという奇特な方、最低でも「桜闇」と「月蝕の窓」は合わせて読んだ方が
良いかと思います。しかし、私も読んだのに内容忘れてたから「これ誰だ!?」てな状態
でしたがね・・・。