ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

鮎川哲也/「りら荘事件」

本格ミステリの巨匠・鮎川哲也さんの「りら荘事件」。

秩父にある、りらの花咲く‘りら荘’。8月末、そこに日本芸術大学の学生七人が訪れる。
翌日、トランプのAに始まる凄惨な連続殺人が幕を開けた・・・巧妙に仕掛けられた殺人事件の
犯人とその悪魔的トリックの真相とは?名探偵星影竜三が事件の謎を解く。

久しぶりにこの書庫の更新をします。忘れてた訳ではないのですが、昔に読んだものばかりなので、
軽くでも再読しないとなかなか記事を書けないという弱点があるのですね。でも、この作品は
再読なしでも十分強烈な印象を残した作品。読んだ時は本当に衝撃を受けました。
ラストの謎解きを読んで初めて文中のあちらこちらに散りばめられた伏線に気付き、その巧妙な
仕掛けにただただ感心。犯人の意外さにも脱帽。「本格ミステリってこうだよ」と教えてくれてる
ような作品。私の中では間違いなく鮎哲作品No.1です(ちなみに短編だったら「達也が嗤う」
が好き)。
特にレインコートの効果的な使い方がいいですね。一つ一つの小道具にもちゃんと意味がある。
こういう全ての溜飲が下がるような作品が好きなんです。それぞれの殺人方法も凝っているし、
トランプの暗示もいい。全てが私好みの作品。書かれた時代が時代ですから、全体に漂う古臭さ
というのはあるのですが、そこがまた古典ミステリという感じで良い。音楽が好きな方も、音楽
に関する薀蓄たっぷりなので楽しめるのでは。
星影竜三のスマートな推理も好きですね。鬼貫警部よりはこっちの方が好み(だいたい反対
される気がしますが)。

最近めっきり鮎川作品からは遠のいてしまっているのですが、たまに読むとああ、いいなぁと
感じるものばかり。コンパクトに纏められつつ、完成度の高い短編も好きですね(「五つの時計」
「くだり‘はつかり’」とか好きですね~)。名作と名高い「黒いトランク」を早く読まなければ、
と思っているのですけれど(家にはある)・・・読む本が山積みで、いつになることやら。
こんな記事を書いてないで読めよ、という声が(誰の?)聞こえてきそうだな~・・・^^;