ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

鯨統一郎/「喜劇ひく悲奇劇」/角川春樹事務所 ハルキ・ノベルス刊

トンデモミステリ作家・鯨統一郎さんの「喜劇ひく悲奇劇」。

回文愛好会サークル「回文こんぶイカ」のメンバー11人は、合宿旅行の為利尻へやって来た。
しかし、宿泊地である< 高山館(たかやまやかた)>で彼らを待っていたのは、回文見立て
連続殺人であった。しかも、合宿地は何者かの手によって、外部から遮断された陸の孤島と化して
いた。突如合宿地へ迷い込んだ探偵乾(いぬい)まで現れ、メンバーたちは疑心暗鬼に。
犯人はこの中にいるのか!?全てが回文に彩られた超絶ミステリ。

いやー、くだらない。もう、いかにも鯨さんらしいくだらなさ。ほとんどのページに回文が出て来て、
あっけに取られました。よくもまぁ、こんなに考えつくものです。だいたい、サークル名が
<回文こんぶイカ>て・・・。もう、そこ読んだだけで笑ってしまいましたよ。しかも、
その部分は電車で読んでいたので、かなり怪しい人状態・・・。
結構苦しいものも多いけど、その涙ぐましい(?)努力に脱帽でした。しかし、殺人が起こって
も、各々の台詞が回文になっていたりして、いまひとつ緊迫感がない。現実味という点では
相当に問題ありでした。まぁ、そういう小説だと思って読めば、楽しめるのではないでしょうか。
鯨さんらしい発想だなーと思っていたのですが、泡坂妻夫さんの小説に同じようなものがある
らしいですね。どうやらそちらの小説へのオマージュ的な作品のようです。
回文の部分はすべて(一語の単語でも)太字表示になっているので、ぺらぺらめくってみれば
その回文の多さに驚かされる筈。
圧巻はラスト付近で中井豊が語る自作小説「新名探偵回転対面史」。古今東西
名探偵が勢ぞろいして推理合戦を行うという内容らしいのですが、これでもか、という位の
回文が出て来ます。しかし、実際読んだら読みにくい小説だろうなぁ・・・。
ちなみにこんなのが出て来ます。

コナン変な子
夜鬼貫津におるよ
芳敷竹史はしけた騎士よ
みな千葉地区千葉千波
根津愛威圧ね

・・・ね?くだらないでしょ?^^;これよりもっと苦しいのが怒涛のごとく
出てくるんですよー。

なんか、当分回文は読みたくない、という位いろんな回文を読んだ気がします・・・。
回文がすごくて、肝心のトリックなんかふっとんでしまいましたよ(苦笑)。
一応本格ミステリっぽく見立てや密室なんかも出て来ますが、それも全て回文に纏わるもの。
ちょっと苦しすぎるぞ、というのが正直なところですが。回文好きにはたまらない一冊
でしょうが、そうでもない人には、バカミスとしか思えないかもしれません(笑)。

まぁ、奇書・怪書の類であることは間違いないです。
くだらないミステリが読みたくなったら、是非この一冊をお薦めします^^