ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

若竹七海/「猫島ハウスの騒動」/光文社 カッパノベルス刊

若竹七海さん待望の新作「猫島ハウスの騒動」。

葉崎半島の先、ごく少数の人間と百匹を超える猫が暮らす通称‘猫島’。夏休みのある日、
高校生の菅野虎鉄が、ナンパした女を連れて、< 猫のため息 >という入り江で発見したのは、
ナイフの突き刺さった猫の剥製だった。その3日後、猫島の派出所に、マリンバイクで海を
暴走していた男と崖の上から落ちて来た男が衝突事故を起こしたとの通報が。どうやら降って来た
男は、ナイフが刺さった猫と関連があるらしい。
やる気のないグータラ巡査の七瀬と、葉崎署の敏腕警部補・駒持は関連を調べ始めるのだが。

久しぶりの若竹さんの新作ということで、あっという間に読めるかと思っていたのですが、
場面場面が次々と飛ぶので状況把握するのに手間取り、結構時間がかかってしまいました。
なんとなくいつもの若竹作品よりも文章が読み辛く感じたせいもあります。章立てが細かく
、その都度語り手が変わるせいかも。全て読むとちゃんとつながっているのですが。
猫が苦手な駒持警部補と、出てくる度に満身創痍になっていく七瀬巡査のコンビは良かった。
特に、事件解決後の二人のやりとりがいい。七瀬青年はこれで少しは警察官としての自覚が持てる
ようになったのでは。
ラストのポリス猫DCの独白もいいですね。強奪金の隠し場所のヒント○○○○の謎に
関しては、この単語を聞いたら、私はこれしか思いつかない位なので、やっぱりか~と
思いましたが。まぁ、そのもの自体だとは思いませんでしたが・・・(その下に隠されてる
とか、それに違うヒントが隠されてるとか、かと思った)。

ところで、一番気になったのは虎鉄と響子ちゃんの修学旅行での出来事。おそらく前作からの
流れだと思うのですが、何せ前作読んだのが相当前。何があったのか全く思い出せず、未だに
もやもやしてます。これは再読しなければ・・・と思っています。あー気になる。

それにしても、本書は至るところに猫、猫、猫。猫好きな方には楽しめる一冊です。
私は実際こんなに猫がいたらちょっと怖いな・・・^^;
ただ、育て切れなくなった猫を捨てに猫島に来る不届きな人間なども出てくるので、好奇心で
動物を飼うなかれ、という警鐘も。猫たちは一丸となってラストで大活躍もします。
本書においては、自己利益の為に身を滅ぼすような人間などよりも、遥かに賢いのは猫の方なのかも
しれません(特にポリス猫DCは三毛猫ホームズかと思う程)。

猫好きの方、是非お手に取ってみてはいかがでしょうか?