ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

永嶋恵美/「一週間のしごと」/東京創元社刊

永嶋恵美さんの青春ミステリ「一週間のしごと」。

恭平の幼馴染・菜加には、昔から拾得癖があった。犬や猫、アルマジロなど、処理に困る
ものばかり拾って来る。そして、その後始末をいつも恭平に押し付けるのだ。そんなある日、
またしても菜加が拾って来たものは・・・人間の子供だった!翌日、この子供の親と見られる
女性が、自宅で集団自殺死体となって発見され、事態は思わぬ方向へ・・・彼らの体験した
一週間の出来事とは。

少し前に読んだ桜庭一樹さんの「少女には向かない職業」と対のように同時期に発売された
本書。こちらはあまり取りざたされていなかったのですが、ミステリフロンティアということで
手に取ってみました。
なかなかどうして、面白かったです。主人公恭平のキャラが好きですね。破天荒な幼馴染に
振り回されて口では文句を言いつつも、ちゃんと彼女の為にいろいろ行動する姿が格好良かった。
それに、恭平や弟の克己を振り回す理不尽な行動をする菜加ですが、ちゃんとその行動には
一本筋が通っていて、基本的には優しい少女という所に好感が持てました。だいたいこの手の
ヒロインは感情移入出来ずに終わるパターンが多いのですが。ただ、話の流れは割と予測しやすく、
先の展開が読めてしまった点はちょっと物足りなさを感じました。
特に、合間に意味深に挟まれている男女の挿話、男の正体はもうひとひねりあるかと思って
いたのですが、そのまんまだった・・・。ミステリとしては弱いけど、少年少女の一週間を
追った青春小説だと思えば、テンポ良く読めるし楽しめるのでは。ラストは恭平にとっては
なかなかに辛い結末で、失ったものも大きい訳ですが。その後に多少のフォローがあるので、
読後感は悪くなかったです。少年少女が力を合わせて一人の少年を救おうとするという、
こういうシチュエーション自体が結構好きですね。

派手さはないけれど、読んで損はない佳作だと思います。少年少女の一週間の奮闘ぶりを
お楽しみあれ。