ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

「ななつのこものがたり」/文:加納朋子 絵:菊池健/東京創元社刊

イメージ 1

加納朋子さんの絵本「ななつのこものがたり」。

はやてはある晩、おかあさんに、ある田舎の村に住む一人の男の子‘はやて’の物語を
聞かせてもらう。物語のはやての家には畑があって、そこですいかを育てていた。しかし、
そのすいかが夜毎盗まれるようになってしまった。そこである晩、はやてが見張りに立つ
ことになった。はやては怖がりだが、勇気を持って一晩守り通した。しかし、すいかは
やはり盗まれていた。悔しくて悲しくなったはやては、めちゃくちゃに走り回って、ある
一軒の白い家に辿りつく。そこにはあやめ色のカーディガンを来た一人の女性が住んで
いた。その女性にこっそり‘あやめさん’とあだ名をつけたはやては、ことの一部始終を
あやめさんに語って聞かせる。その話を聞いたあやめさんは、はやてに意外な真実を教えて
くれたのだった。はやてとあやめさんの心温まる7編のエピソード。

本書は、加納さんのデビュー作「ななつのこ」に登場する絵本を現実に刊行したものです。
この作品でとても印象的な役割を果たしていた主人公の愛読書で、私もすごく読んでみたいと
思っていた絵本。
物語もとても素敵だけれど、絵がとにかく綺麗。菊池さんは加納さんのカバー絵を数多く
手がけている方で、美しい色彩と優しいタッチが作品の雰囲気にぴったりです。とっても
素敵な絵本です。はやてとあやめさんのふれあいがとてもほのぼのしていて、可愛らしい。
はやての話を聞いただけで、あっさり謎を解いてしまうあやめさんの安楽椅子探偵ぶりも素敵。
ただ、あやめさんはかなり病弱らしく、ラストにはやてに告げる言葉はかなり意味深。結局
その辺りはうやむやなまま読者に結末を委ねる形になっているのが気になる所ではありますが。
あやめさんは結局どうなっちゃうの!?きっと駒子も同じ思いを抱えた筈。ただ、作中作とは
微妙に収録作に違いがあるようです。「ななつのこ」を読んだのが相当前なので、どこが
違うのか私はわからなかったのですが。

この語り手のおかあさんが実は駒子で、はやてが瀬尾さんとの子供だったら面白いのになーと
ちょっと考えてしまいました。それは流石に深読みしすぎでしょうね^^;
本書を読んで、また「ななつのこ」を読み返したくなりました。一緒に読むときっと楽しさは
倍増でしょう。是非合わせて読まれることをお薦めします。