ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

大森望・豊﨑由美/「文学賞メッタ斬り!」/PARCO出版刊

大森望さん、豊﨑由美さんの文学賞に纏わる対談集「文学賞メッタ斬り!」。

日本の数ある文学賞について、SF翻訳家の大森望と、文芸ライター豊﨑由美が本音を
言い合うガチンコ対談集。

実は本書が出版されて割とすぐに知人から本の存在を聞き、主要な文学賞の部分(もちろん
私にとってはミステリ関連のあたり)は立ち読みしてしまっていたのですが、先日本屋で
第2弾が刊行されているのを見かけて、ちゃんと読んでみたくて手に取りました。

いや~、ほんとに各賞メッタ斬っていて、大御所のくだりなどは読んでいてハラハラ。
こんな発言して、この二人この業界で生きて行けるのか?てな位、文学賞選考会の内情を
暴露してます。特にすごいのが宮本輝(テルちゃん)と渡辺純一(ジュンちゃん)について。
この二人に関してはいろんな賞で名前が出されています。二人とも権威はありそうですが、
選考に関してはかなり的外れな発言を繰り返すらしい。この本を読むと、賞を取ったからと
言って、必ずしもいい作品とは限らない、というのがよくわかりますね。たった一人の偏った
考え方で賞をあげてしまう場合もちらほら。選考委員メンバーがどういう人選かも大きい。
直木・芥川クラスの大きい賞ほどそういうものが顕著に現れるようです。実は直木・芥川
を取った作品ってほとんど読んでいないので(特に芥川)、実際受賞作がどの程度のレベル
なのかはよくわからないのですが(先日文藝春秋に載っていた絲山秋子さんの「沖で待つ
は読みましたが、正直私には良さがよくわからなかった)。直木賞なんかは、取る作家の
持ち回りらしく、そろそろこの人に取らせるか、みたいな感じで決めていることが多いよう
な雰囲気。そもそも京極さんが「続巷説~」で取ったのも変だったし。「嗤う~」か「覗き~」
だったら納得したのに。

ミステリ好きの私が気にする賞といえば、乱歩賞・横溝賞・鮎哲賞・ホラーサスペンス賞・
メフィスト賞・このミス大賞あたりですね。ただ、ぺらぺらめくってみて食指が動かなければ
手に取らないし、賞を取った取らないってあまり関係ない気がします。賞取ったやつでも駄作は
いっぱいあるし、取ってなくても面白いのは山ほどある。結局、文学賞というものは、出版業界
の活性化の為の一つの手段であり、作家に与えるボーナスみたいなものということでしょう。
賞取ればとりあえず読者は飛びつきますし。もちろん、さすが、と思うのも多いのですが。

とにかく、賞レースの内情がとても良くわかって面白い本です。それにしても、日本っていろんな
文学賞があるのですねぇ。各地方の文学賞でも、割と選考委員が豪華だったりして面白いです。
ラスト付近に出てくる、文学賞甲子園、実現させて欲しいなぁ。めちゃめちゃ面白そう。意外な
伏兵的作品がたくさん出てきそうだし。ただ、出場作はミステリじゃないでしょうけど(苦笑)。

日本の文学賞についていろいろ発見できる楽しい一冊です。巻末の文学賞受賞作の点数評価も
必見。上は90点を超えるものから、下は10点という厳しいものまで、様々です。70点
以上のは読んでみたくなりました(ちなみに綿矢りささんの「蹴りたい背中」は両者70点を超えて
いた・・・)。