ミステリ読書録

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太田忠司/「予告探偵 西郷家の謎」/中央公論新社 C★NOVELS刊

太田忠司さんの「予告探偵 西郷家の謎」。

1950年12月。300年以上続く旧家・西郷家に届いた一通の手紙。その手紙には、「12月
4日12時、罪あるものは心せよ。全ての謎は我が解く 魔神尊」との一文が。訳もわからず友人
の魔神に誘われるままに西郷家に赴いた文筆家の木塚東吾は、逗留中に奇妙な事件に巻き込まれる
ことに。魔神が出した謎の手紙の真の意味とは?旧家で繰り広げられる殺人事件の謎を魔神が
暴き出す。

読み始めた当初は、割と古典に忠実な本格作品を目指しているのかな、でもちょっと設定があり
きたりすぎるかな、などと思いながら読んでいました。展開も先行作と比べてそんなに目新しい
ものはなく、謎解き部分まで読み進んでも、「ふ~ん」てな感じ。面白くない訳ではないのですが、
この手のものは先行作がたくさんあって、それに比べると地味かな、と。でも、謎解きが終わって
更にページをめくってみると・・・この先はネタばれになるので書けません。
いや~びっくりしました。こんなオチが待っているとは。確かに、途中読んでいて何か違和感を覚え
る文はいくつもあったのです。これは、読者によっては賛否両論あるかもしれません。でも、私は
素直に感心しましたね。
だって、ちゃんとヒントは散りばめられていましたから。でも、このオチを推理できる人はそうは
いないのではないかなぁ。私はいい意味で‘やられた~’と思えたので、結構好きですが。
太田さん、やるじゃん!て思いました。ラストを読むと、いろんな部分の設定が太田さんが仕掛け
たミスリードのトラップだと気付きます。いい意味でも、悪い意味でもこういう‘意外性のある’
作品は好きですね。
ただし、人によっては本を投げたくなる場合もあることを明記しておきます。
この手のオチが嫌いな人もいますからね~(いや、私も作品によっては嫌いな場合も
ありますので)。

あと、魔神のキャラはちょっと類型的すぎる感じがしました。なんでこの手の作品の探偵役は
皮肉屋で性格が極悪なんでしょうね。藤木さんの朱雀、柄刀さんの熊ん蜂、貫井さんの吉祥院
先輩・・・。麻耶さんのメルカトルも性格悪いですよね~。頭が切れると性格が悪くなると
いいたいのでしょうか。なのに何故かみんな顔はいい(笑)。あれ、メルカトルってどう
でしたっけ。あんまり読んでないから忘れてしまった。

まぁ、とにかく百聞は一読にしかず。読んでみて下さい。このオチに気付けたら、アナタは
すごい人です。尊敬します。