ミステリ読書録

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大倉崇裕「アロワナを愛した容疑者 警視庁いきもの係」(講談社)

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いきもの係シリーズ第五弾。今回は、三作の中編が収録されています。

なんか、一作ごとに、薄ちゃんの言葉の言い間違い度がどんどん

激しくなって行っているような気がするんですが。須藤さんがそれに

どんどん慣れて行っているのが面白い(笑)。ノリツッコミみたいな

二人の会話が楽しいです。まぁ、多分、事件現場でこれやられたら、

他の人はイラッとするでしょうけど・・・話が全然通じないし進まない

んだもの^^;須藤さんはもう、薄ちゃんのことを娘のように愛おしく

思っている感じですよね。大事でしょうがないって感じ。恋愛とは

全然違うでしょうけど。ほんと、いいコンビだなって微笑ましくなりますね。

 

では、一作づつ感想を。

 

『タカを愛した容疑者』

タカの面倒まで見てしまう薄ちゃんはやっぱりすごいですね。タカの一刀が

カッコ良かったなー。殺人事件の犯人は予想通りだったのですが、その

からくりはちょっと複雑で、意外性がありました。その前にもう一つの

殺人事件があったとは。

最後、被害者が飼っていた犬に関しては救いがあって良かったです。

人は殺せても、犬は殺せなかったという心理はちょっと理解し難い

ものがありましたが(薄ちゃんなら理解できそうですけど)。

それにしても、須藤さんと薄ちゃんに目をつけた『ギヤマンの鐘』はしつこい

ですね。その後の話にも出て来るし。二人の今後が心配になりますが。

 

『アロワナを愛した容疑者』

いきなり福家警部補登場でテンション上がりました(電話での通話と途中

名前が出て来るだけだけど)。相変わらず魔女めいてますねぇ。ラストで

福家シリーズの宣伝が入ったのには面食らわされましたけど(苦笑)。

あちらのシリーズも、次の敵は強敵になりそうな感じですね。そちらの

新作も楽しみではありますが。

おっと話がそれてしまった。こちらの話でも『ギヤマンの鐘』が絡んで

来て、だんだんこのシリーズもスケールが大きくなって来ているような。

窮地に陥った時の薄ちゃんの頼もしいこと!なんでこんなに強いんですか!?

七つ道具みたいなのまで持ってるし(笑)。

今回初登場の福家警部補と交代で京都からやって来た静さん、キャラ的には

もうちょっとインパクトが欲しかったかなぁ。福家警部補に比べると、

役者不足な感は否めないかと。まぁ、あんな魔女と比べるほうが間違って

いるのかもしれませんが。刑事ものにしては、このシリーズは女性の

登場が多いですね。華やかで良いことです。

被害者のアロワナ(クレセント)を最終的に引き取った人物に関しては、

ちょっと不満。こんな悪党に引き取られて大丈夫なんでしょうかね。

ま、福家さんがあとはなんとかしてくれると信じましょう。

 

『ランを愛した容疑者』

植物が題材になるのは、シリーズ初でしょうか。そういえば、警視庁動植物

管理係でしたね。植物も当然、対象になりますよね。

ランは、はまる人はハマるって言いますもんね~。そういえば、私の友人の

お母様がハマって育てているって言っていたなぁ。

それにしても、今回の冒頭に出て来た薄ちゃんが預かっているモノのシーン

は生理的にキツかった。警察博物館の受付嬢、弥生ちゃんが嫌悪するのも

わかります。私も絶対ムリ。しかも三千匹超えって!!想像するだけで

気が遠く・・・ああ・・・。うう、寒気が。

巷で売っている胡蝶蘭が寄植えだったとは知らなかったです。手がかかって

大変そうだけど、手がかかる子ほど可愛いって言いますよね。被害者も、

そんなランを愛してやまなかったんでしょうね。ラストで、被害者がラン

を最後まで愛していたと知って、救われる気持ちになりました。薄ちゃんが

被害者のランの引き取り手が見つかったのに、最後に寂しそうだったのは、

美しく咲かせたランがすべて、他の人の手に渡ってしまうからかな。多分ラン

にとっては、被害者に最後まで育てられたかったでしょうからね・・・。