ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

法月綸太郎「法月綸太郎の消息」(講談社)

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久しぶりののりりんシリーズ。予約本が重なって借りたはいいものの、読めるか

微妙なところだったんだけど、やっぱりこのシリーズは抑えておきたいので、

他の本を一冊諦めました(伊岡さんだった・・・)。

今回は四作収録されています。

ホームズとポアロものを題材にした二編と、都筑道夫氏の退職刑事

シリーズを下敷きにした二編を加えたもの。正直、私はどの作品もかじった

くらいの知識しかないので、どう読み取っていいのか戸惑うばかりでした。

特に、ホームズとポアロの過去作品の新説談義に関しては、当該作品を

読んでないため、何が何やら。しっかり本歌作品を読み込んだ人には、ふむふむ

と頷ける説だったりするのかもしれないのですが。わざわざ法月シリーズで

やる必要があるのかはちょっと謎。もうちょっと、直球の本格ミステリ

読みたかったなあ。

『白面のたてがみ』は、亡くなったオカルト研究家の堤豊秋が残した

論文が発見されるが、その中に、チェスタトン『鱶の影』は、

コナン・ドイル『白面の兵士』『ライオンのたてがみ』の、二つの

作品を継ぎ足して書かれたものではないかと示唆する記述があり、綸太郎が

自分でも独自の考察を試みる、というもの。どれも読んでないので、

なかなか作品に入っていけなかったです。『星が月になる?』という、

魚に足がついたような奇妙なイラストの解読は興味深かったですけどね。

退職刑事シリーズを下敷きにした真ん中の二編も、ちょっとミステリとしての

解決がわかりにくかったような。『あべこべの遺書』は、以前アンソロジー

で既読だったのですが、確かその時も同じような感想だった覚えがあるんです

よねぇ。その時から大分加筆修正したそうなんですが・・・。遺書があべこべ

だったという謎自体には興味を引かれたのですけど。

『殺さぬ先の自首』は、法月警視の口から綸太郎の母親のことが出て来て

ビックリ。そういえば、あんまり母親の話って二人から聞いたことがなかった

ような。すっかり、その存在を忘れてしまってました。法月警視が妙に

歯切れが悪いのが、珍しいというか、新鮮でした。しかし、綸太郎の母親の

死因にも驚かされました。多分、過去に出て来ているんでしょうけど、

全く覚えてなかったです。二人とも、敢えてそのことには触れないように

してきたのかな。

最後の『カーテンコール』は、ポアロの双子の兄・アシルは実在するのか否か

の議論を交わす話。いろんな作品が引用されていて、一部ネタバレ表記も

されているので、気になる方は原典に当たってから読まれた方がいいかも

しれません(クリスティの『カーテン』『象は忘れない』『ビッグ4』

ハロウィーン・パーティ』、クイーンの『レーン最後の事件』辺り)。

章ごとに『~の結末が明かされる』と明記されてはいるので、一応注意書きは

あります。でも、未読の人は、ほとんど未読のまま読んじゃうんじゃ

ないかなぁ(私みたいに^^;)。

なんか、演劇を読んでいるような気分になりました。書き方もそれっぽいし。

もし本当にポアロに双子の兄がいたとしたら、いろいろと覆ることがありそう

です。クリスティ専門家が読んでどう思うかはおいといて、素人的には

興味深い考察ではありました。ただ、途中に出て来るギリシャ神話の薀蓄

には正直辟易しましたけど。カタカナが多いと読むの疲れるんだよね^^;