有川さんの最新エッセイ。知らない間に、改名されてたんですね、有川さん。
浩さんからひろさんと、名前がひらがな表記になったそうです。改名の理由と
経緯も本書に説明されています。ひらがな表記だと男性作家と間違えられる
ことは少なくなりそうですね(それが改名の理由ではありませが)。かくいう私も、
一番最初は男性作家だと思ってましたもん(ありかわひろしさんだと思っていた)。
新聞紙上で掲載されたものが中心なので、前作同様、エッセイにしてはちょっと
堅苦しい感じの内容のものが多い。しかも、いくつかのメディアで同時期に掲載
されたものを全部収録している為、今回も重複した内容のエッセイがいくつも。
同じ内容の文章を、多少の表記が変わっているとはいえ、何度も読まされるのは、
正直ちょっと辟易します。掲載されたそのままで収録したかったのでしょうが、
そこは単行本だけを読む人の為に、少し編集してもらいたかったなぁ。それか、
どれかひとつにしぼって載せるか。前作のエッセイでも同じことを思ったの
ですけど。
有川さんって、とても真面目でまっすぐな人なんだろうな、というのはどの
エッセイ読んでいてもわかります。曲がったことが嫌いというか。だから、世の中
のいろんなことに物申したいのだと思う。いろいろ腹を立てていることがあって、
それをかなりエッセイにぶつけてる感じがする。ただ、個人的には、エッセイって、
小説ではわからない、作家の素の顔が垣間見られるところが好きで読んでいる
ところがあるので、あまり個人的な主義主張とか読みたいと思わないんですよね。
日常の何気ない出来事とか体験談みたいなものの方が読んでいて楽しいというか。
だから、有川さんのエッセイは、少し堅苦しすぎて、読んでいてしんどいことが
多い。文章もあまり崩さないし。(三浦)しをんさんとは対照的だよなぁと思う。
こういうエッセイの方が好きって人もたくさんいるだろうし、アマゾンの評価は
みんな☆5つ評価だったので、好みの問題だと思いますけどね。
有川ファンから大ブーイング受けそうなこと書いてるなぁ。まずい・・・。でも、
私が一番引っかかったのは、神戸のクリスマスツリーに関する表記。私は震災経験者
じゃないし、関西にも住んでいないから、この企画自体の是非に関しては、
正直よくわからないんです。有川さんが、ここまで激怒している理由も、いまいち
理解しきれていないというか。当事者だったら、同じように激怒して有川さんを
擁護する立場になるのかもしれないです。震災の被害者の鎮魂の為に、神戸に
巨大なクリスマスツリーを設置する、という企画。この企画に世間から疑問の声が
出て、有川さんもその声に賛同した、っていう内容なんですけど。とにかく、
その内容がとても攻撃的で、主催者に対する言葉もかなり強い口調で非難している
ので、ちょっと驚きました。阪神淡路の震災を体験している有川さんだからこそ、
強い思いがあるのもわかるのですけども。主催者側に直接意見を伝えたというのも
びっくりしました。多分、有川さんはとても正しいことをおっしゃっているのだと
思う。でも、なんだかその一連の文章を読んでいて、どうしても有川さんの『上から
目線』な考え方に引っかかりを覚えてしまって。どの文章だか忘れてしまったの
だけれど、相手に対して『許さない』という言葉を使っていたのが印象的で。
『許せない』ならわかるのだけれど、『許さない』って、上の立場じゃなきゃ
使わない言葉だと思うんですよね・・・。確かに有川さんは今や飛ぶ鳥も落とす
勢いの人気作家ですし、私ごとき庶民からしてみれば遥か上にいる方なのは
間違いないとは思うのですけれども。ただ、何か、そういう考え方が鼻について
しまって、正しいことを主張しているのであろう有川さんの方に嫌悪感を覚えて
しまった。被災者の立場から考えれば、きっと私の方がおかしいのだと思うけれど。
何となく、有川さんの文章って反発心を覚えてしまうときがあるんですよね。
合わないのかなぁ。
読んでいて楽しかったのは、本の紹介の部分かな。一番嬉しかったのは、私が
萌え系ミステリのベスト3に入ると思っている、三雲岳斗氏の『少女ノイズ』が
紹介されていたこと。まぁ、ミステリ部分はどうでもいい、という暴論には
頷き難いものもあるのだけど^^;でも、あのお話の読み方自体は、私も有川
さんとほぼ一緒で、恋愛パート第一で読んだので。大いに共感出来るものが
ありました。あとは、新井素子さんに対する思いにも共感出来たし、那州雪絵さん
(少女マンガ家)の作品が紹介されていたのも嬉しかったな。取り上げられていた
作品は読んでないけど、私も『ここはグリーン・ウッド』は大好きで、
何度も何度も読み返した漫画でした。すかちゃんが好きだったんだよなー。
足が速くってね。典雅なんだか平凡なんだかわからない名前(笑)の光流先輩の
キャラも大好きだった。懐かしい・・・。
あとは、有川さんのコロボックル愛が随所で感じられるエッセイでした。有川
バージョンしか読んでいない自分が申し訳なく思うほど。原典はきっと
素晴らしいのでしょうね。
二本収録されている短編も良かったです。一作目の『彼女の本棚』は、前作
『倒れるときは前のめり』に収録された作品と対になっている作品だそうで、
すっかり忘れていたので、読み返したくなりました。
二作目の『サマーフェスタ』は『県庁おもてなし課』のサイドストーリーだそう。
『県庁~』の主人公の青年の若き日の恋の話、ですかね。切なかったけど、
若かりし頃の恋ってこういうものだよなーって思いました。