講談社が、十代限定(正しくは15~19歳だったらしい)で聴講生を募って
開催された、特別授業の様子を収録したもの。
無料で京極さんの講演会が聞けるなんて、羨ましいなぁ。この特別授業は
他にもいろいろな人が担当しているらしく、過去の既刊には高橋源一郎氏や
瀬戸内寂聴さんなんかの名前もありますね。
言葉に関していろんなことをわかりやすく伝えてくれていて、十代の時に
聞いたら絶対心に刺さっただろうなぁと思いました。今の私の心にも十分
響きましたけれどね。
やっぱり、京極さんは言葉のスペシャリストだなぁと思わされました。
『すべての読者は誤読』『あらゆる争いは言葉の行き違いから起こる』
『スポーツも勉強も勝ち負けではない』
『世の中にいいことなんてない でも面白がろうと思えば面白い』
『語彙の数だけ世界がつくれる』『本の数だけ人生がある』
・・・目次のタイトルだけざっと羅列しただけでも、言葉の中にいろんな示唆が
含まれているのがよくわかる。京極さんの言葉は、本当にクレバー。でも、
語り口がソフトで、全然偉そうじゃない。かといって自分を変に卑下することも
ない。さらっと語られた言葉に、とても説得力があって、例えもわかりやすくて
面白い。もっともっといろんなお話が聞きたくなりました。
愛というのは執着だ、というお話も説得力あったなぁ。そういえば、そうだな、と。
小説の読み方に関しても。読む側の読み方がすべて正解で、作者の意図なんて
正確に汲み取ることは不可能だし、必要もない、という言葉には、すごく勇気
づけられました。私は以前、ブログで発した感想に対して、それは誤読だと
コメント欄で指摘されたことがありまして。その方のおっしゃることもわかり
ましたけれども、やっぱり自分の感想に対しての批判はすごくショックが大き
かった。結局、その記事はファン限定だか非公開だかにして、一般公開するのを
辞めちゃったんじゃなかったかな。でも、今思えば、単なる一個人の感想で、
自分がそう思ったのだから、堂々としていれば良かったのかもしれない。
今回の京極さんの言葉をその時の自分にかけてあげたくなりました。小説なんて、
すべて誤読みたいなものなんだから、どんな感想持ったっていいんだって。
他人の意見を聞く必要なんかないんだよってね。
天国よりも地獄の方が面白い、という意見も、確かに!と思いましたね。いや、
誤解を招く言い方かもしれないですけど。天国の絵より地獄の絵の方が見ていて
面白い、というのは間違いないですし。もちろん、死んだ後行きたいのは天国
ですけどね(笑)。
どの言葉にも含蓄があって、さすが京極さんだなぁと思いながら読みました。
薄いのであっという間に読み終わってしまった。っていうか、文章じゃなくて、
生で聴いてみたかったなー。京極さんのお話なら、何時間でも聴いていられそう。
以前、綾辻さんと辻村(深月)さんとの対談もめっちゃ面白かったもんな。
これを実際聴きに行けた聴講生さんたちがとても羨ましいと思いました。