ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

浦賀和宏「デルタの悲劇」(角川文庫)

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本当に、とてもとても久しぶりの浦賀作品。お友達ブロガーのゆきあやさんの

記事で、あの八木剛士が出て来ると知ったから、興味を惹かれて即予約しました。

 

久しぶりに浦賀作品を読もうと意気揚々と予約していた矢先の浦賀さん訃報の

ニュースには、本当にショックを受けました。だって、まだまだお若い筈。

そりゃ、最近めっきり読まなくなっていたけど・・・でも、やっぱり好きな

作家さんのひとりだったので。最近は文庫で次々と新刊を出されていて、精力的

に書かれているなぁと思っていたところだったのに。

そんな精神状態で読み始めた為、冒頭の八木の母親の手紙の文言が、あまりに

現実に即していて、一瞬息が止まりました。八木が浦賀和宏というペンネームで

小説を書いていて、来月出る『デルタの悲劇』が遺作になる、というのですから。

もちろん、本書が出た当時は浦賀さんはまだご存命だった筈です(急逝のニュース

は今年の三月)。ご本人は、本当にこれが遺作になるなんて思いもしなかった筈。

何か予言のような作品に思えてショックでした。まさか、ご自分の死期を知った上で、

本当に遺作のつもりで書かれたのでは・・・と勘繰ってしまった(重病か自○とか

・・・)。でも、調べてみたところ、死因は脳出血とのこと。亡くなる三日前に

普通にツイートもしてらっしゃったそうで、本当に急逝だったようです。ご本人

だって、自分が死ぬなんて思いもしていなかった筈です。きっと、まだまだ

書きたい作品もあったことでしょう。

まだ41歳だったそう。若過ぎます。悲しいです・・・。

書き溜めた作品がこれから出版化される可能性もありますが、ご本人が生きてる

間に出版された作品は本書が最後ということで、本書が遺作と言ってもいいのでは

ないかと思います。

最後の作品となった本書は、浦賀さんのトリッキーな一面がたくさん詰まった

作品です。正直、最後の作品解説の部分を読むまで、頭が混乱していて、きちんと

理解しきってはいなかったので、作品の一部として収録されたこの作品解説に

かなり助けられました。更に、最後に出て来た母親の手紙で明らかになる真実

にも驚かされました。ストーリー自体は単調で、いまいち面白味に欠けるなぁ

という感じだったのですが、終盤のトリックが明かされる部分で、一気に

その単調な部分も含めてすべてが浦賀さんの仕掛けの一部であったことが

わかり溜飲を下げました。八木を含め、登場人物には全く好感持てる人物が

いませんでしたが・・・。

残念だったのは、八木剛士が出ると知って楽しみにしていたのに、純菜シリーズ

の八木とは全然別の人物だったところ。名前も剛士じゃなくて剛だし^^;

いやまぁ、純菜シリーズの八木がそんなに好きだった訳でもないけどさ。

しかし、浦賀さんの本名が本当に八木剛だったとは・・・。訃報のニュース

見た時に、ウィキペディアで調べたら、本名八木剛って書いてあって目が点に

なりましたもん。

これが最後の作品とは、本当に残念です。まぁ、純菜シリーズもまだ残ったまま

だし(ゆきあやさん、ごめんよぅ・・・!!!(><))、読み逃し作品もたくさん

あるから、これから少しづつ読んでいけたらいいなと思う。

ご冥福をお祈りいたします。