ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

喜国雅彦・国樹由香「本格力 本棚探偵のミステリ・ブックガイド」(講談社)

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コロナ自粛で図書館が休館になり、図書館本をすべて読みきって返してしまった

為、多分二十年以上ぶりくらいに手元に図書館の本がゼロになりました。予約本

も回って来ていたけれど、やっていないものは仕方がない。ということで、現在

自宅本棚の積ん読本を片っ端から消化していくぞ!キャンペーンを絶賛開催中。

一番始めに手をつけたのが、途中まで読んで図書館本に浮気したままになっていた

本書。読むのが勿体なくて寝かせてたというのもあるのだけど。出版された当時

(2016年11月刊行)意気揚々と購入し、始めの100ページ辺りまでは

読んでましたが、内容全然覚えてなかったので、この機会に最初から読み直し

ました。総ページ数532ページとかなり分厚いのですが、面白くって、ついつい

読み始めると止められなくなって、気がつくと腕がしびれていました^^;

漫画家の喜国さんと、奥様の由香さん(も漫画家)、仲良し夫婦ふたりによる、

古典ミステリガイドブック(+α)。いろんなコーナーがありまして、一番

多くページを割いているのが、本格ミステリの研究者・坂東善博士と女子高校生

りこちゃんが選ぶ本当に面白い海外古典ミステリのコーナー(H-1グランプリ)。

古典ミステリなど全く読んだことのない初心者のりこちゃんに、坂東善博士が

チョイスした何冊かの海外古典ミステリを読んでもらって、どれが一番面白かったか

優勝作品を決めてもらうというのが趣旨。りこちゃんはミステリ初心者の割に

意外と作品の核心をつくようなコメントをするので、評価は妥当なんじゃないかと

思いました。素人の女子高生が古典を評価するんだから、忖度なんかせず、

純粋に面白いものが選ばれているだろうからね。

坂東善博士は当然喜国さんご自身がモデルだと思うんですが、りこちゃんの

モデルは誰なのか謎。国樹さんの若い頃だったりして。超有名作品だろうが、

ばっさばっさと斬りまくって毒舌を吐くので、読んでいてとても痛快でした。

このキャラ、どっかで見覚えが・・・と思ったら、壁本作品を読んだ時の黒べるこに

そっくり・・・どうりで既視感ある訳だと思いました(笑)。ただ、出て来る

古典作品、ほとんど読んでないものばかりだったので、実際読んでいたらもっと

共感出来ただろうな~と、ちょっと残念でした。クリスティやクイーンでは何作か

既読のものもあったのですけどね。でも、これだけ毒舌のりこちゃんが絶賛する

優勝作品なら、読んでみたいかも!と思えました。優勝作を書き出そうかと

思ったんですが、全部で27回もあったので諦めました^^;これを機に古典

回帰するのもいいかなぁとも思ったり。最近海外ものって全然読んでないしね。

クリスティやカーなら実家にあるから持って来ようかしらん(図書館やってない

からさ)。りこちゃんの毒舌評価と照らし合わせて読むのも楽しそうだ。

他にもいろんなコーナーがあって、どのページにも喜国さんの本格ミステリへの

愛に溢れていて、楽しくって仕方がなかったです。一気に読むのが勿体ないから、

毎日少しづつ読むようにしようと思うんだけど、ついつい読みふけっちゃって腕が

しびれるっていう(笑)。

でも、私が一番好きだったのは、実は国樹由香さんの『本棚探偵の日常』のページ。

国樹さんが日頃の喜国さんの日常の様子を綴っているんですが、これがめっぽう

面白い。というか、もう、喜国さんへの愛に溢れている。喜国さんがどれだけ

日頃穏やかでいい旦那さんかが伺えて、めちゃくちゃ微笑ましい気持ちになりました。

ほんっとに、ここで怒らなきゃ怒るとこないよ!?ってくらいの状態になっても、

絶対怒らない。常にポジティブシンキング精神。喜国さんってすごい。それに

素直に感動する国樹さんも、とっても素敵な奥さん。二人の会話を一日中横で

聞いていたい(変態か)。でも、中盤位までの回はそんな二人の微笑ましい日常

が描かれているのですが、後半では飼い犬の死や震災後のボランティア活動の

ことなど、真面目な内容も多くなって行きます。そこでも、お二人の真面目で

真摯な一面が伺えて、好印象ではありましたが。お二人とも犬が大好きで、

飼い犬への愛が半端ない。それだけに、愛犬の死の様子が描かれる回は読むのが

辛かったです。一匹が亡くなると、その喪失に耐えきれず、また新たな保護犬を

迎え入れて、常にお二人の家には二匹の犬がいる状態が保たれているようです。

お二人とも、本当に犬が大好きなのですね。

読み終わるのがほんと悲しかったな。もっともっと読んでいたかったです。

本棚探偵シリーズ、やっぱり全部手元に欲しいよ~。単行本版はほとんど絶版に

なっていて、文庫でも手に入りにくいみたいですけど。できれば単行本版で

揃えたいんだけどな(なんせ、装丁が神なんですから)。

これから本格ミステリを読もうという人にとっては、最高の指南書じゃないで

しょうかね。

終盤で本書の前に出た『本棚探偵最後の挨拶』で、日本推理作家協会賞の評論その他

部門にノミネートされ、見事に受賞された旨が出て来るのですが、本書自体でも

第17回本格ミステリ大賞評論・研究部門を受賞されたらしいです。うむうむ。

納得です。

できれば、今度は日本の古典ミステリでH-1グランプリをお願いしますっ。