ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

池井戸潤「不祥事」(講談社文庫)

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これまた、長年本棚に眠っていた積ん読本。ドラマ『花咲舞がだまってない』

の原作。この表紙とタイトルじゃ、誰もあのドラマの原作だとは思わないだろうな。

ただ、ドラマ化に合わせてなのか、その後でかなのか、マンガちっくな表紙の

新装版が出ているもよう。しかも、それ以降のシリーズは、ドラマと同タイトルで

続編が出ているのだから、もう完全にドラマの方に寄ってますね。まぁ、ヒット

したから当たり前か。もちろん、私もハマって観ていました。本書が未読のまま

だったので、その後シリーズの新刊が出ても読むことが出来ずにいたので、

今回読むことが出来て良かったです。図書館始まったら続き予約しよっと。

ドラマから入ったクチなので、どうしても配役イメージは杏ちゃんと上川さん

になっちゃってました。相馬さんは、ドラマよりも情けない感じ。もともと

融資の方でバリバリに働いていた人とは思えない・・・当時の副店長とやり合って

出世競争から外れてしまったことで、性格も卑屈になってしまったのかしら。

まぁ、その分舞の気が強いから、これはこれでバランスが取れていて良いコンビ

なのかも。相馬さんは上司の筈だけど、むしろ舞の方がイニシアチブを取って

行動している感じ。銀行に蔓延る悪い奴らを舞がやり込めるところは、やっぱり

ドラマ同様、スカッとしました。舞は原作でもすごい仕事が出来て、美人っていう

設定でした。普通ならめちゃくちゃモテそうなのに、こういうタイプは銀行

みたいな男性中心の職場だと、かえって生意気だと煙たがられるものなんですね。

書かれたのが大分前だからなのか、銀行内部の人間関係は旧態依然の男社会の体質

そのまんまって感じがして、ちょっと時代遅れな感じがしましたね。今の銀行が

どんな感じなのはわかりませんが。コンプライアンスが叫ばれる昨今でも

こんなだとは思いたくないですけどね・・・。

まぁ、そういう古いタイプの男たちを舞がばっさばっさと斬りまくるところが

読みどころのひとつでもあり、この物語の痛快なところなんですけどね。

原作の方で相馬さんが呼ぶ舞のあだ名『狂咲』は、さすがにドラマではNGに

なったんでしょうね。視聴者から苦情が来そうですもんねぇ。『狂』が禁句用語

なのかもしれませんけど。

記事を上げるにあたってネット検索していたら、これの前にもう一作前身となる

作品があるんですね。しまった。そっちから読むべきだったか。ただ、主人公が

違う人間らしいけど。舞が出て来るのは確実みたいですが、相馬さんは出て来る

のかな。シリーズの続編の前にそっちを読んでおかなくては。