ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

髙田郁「八朔の雪 みをつくし料理帖」「花散らしの雨 みをつくし料理帖」(ハルキ文庫)

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積ん読棚本シリーズ。『銀二貫』がめちゃくちゃ良かったので、当時勢い込んで

買っていた二冊。巷で大絶賛されていたので読むのを楽しみにしていたのですが、

ついついそのままになってしまっていました。

いやぁ、なんでもっと早く読まなかったのかなぁ。ぐずぐずしているうちに

シリーズは全十冊が出てしまっていた模様。ま、完結しているから次いつでるのか

やきもきすることなく、一気に読めるって点ではいいのかも。手元にはこの二冊しか

ないので、これからは図書館で借りて行く予定ですが(再開したので、ぼちぼち予約

して行こうかと思っております)。

噂に違わず、めっちゃ良かったです。『銀二貫』の時もそうだったけど、一話の

中にぐっと来る要素が満載。もう、何度涙腺崩壊しかけたことか。基本あんまり

本や映画等で泣かない私ですが、人情系には弱いんだよなぁ。主人公の澪を始め、

一緒に暮らす母親代わりの芳、奉公先の店主種市、医師の源斉、ご近所さんの

おりょうさん家族、そして、澪の幼馴染で吉原の遊女、野江(朝日太夫)と

澪が心を寄せる浪人風の常連客小松原・・・それぞれのキャラクターがみんな

生きていて、澪とのエピソードはどれもが心温まる。何より、辛く悲しい経験を

持つ天涯孤独の身の上でありながら、いつでも周りの人への感謝の気持ちを忘れず、

料理に対する情熱を持ち、失敗してもへこたれず次へ進もうとする、前向きな澪の

たくましさが、とてもいい。そんな澪だからこそ、周りにも優しい人が集まる

のでしょうね。

また、澪が作る素朴な日本料理がどれもめちゃくちゃ美味しそうなんですよね。

今では当たり前にある料理でも、江戸時代当時の人々にとっては初めての味ばかり。

澪が考え出した新作料理をお客さんが恐る恐る食べては、仰天する、というお決まり

の展開が何とも小気味よかった。今、当たり前に食べている数々の日本料理は、

こんな風にして生まれて来たのかもしれないな、と思わされました。

一巻の『八朔~』では、終盤、つる家が炎上してしまい、種市が廃人のようになって

しまうくだりが辛くて辛くて。それでも、朝日太夫の援助によって新しい道が開けて

ほっとしました。澪の料理を食べた種市が正気を取り戻すシーンには、心打たれたな。

二巻の『花散らし~』では、澪と幼馴染の野江(=朝日太夫)との魂のやり取りが

心に強く残りました。二人は、決して会うことが叶わなくても、心で繋がっている

というのがとても良くわかりました。指で作った狐マークの『涙は来ん、来ん』

のシーンは涙腺決壊寸前に。本当に、お互いに思い合う親友同士なんですね。

そして、終盤のおりょうさんの病の顛末には、本当にはらはらさせられました。

この時代は、ちょっとした病気でも命を落としてしまうことが多いから。あんなに

元気だったおりょうさんが死の床を彷徨う姿は読んでいて辛かった。太一が

快方に向かったからこそ、おりょうさんの病が最後まで気がかりでした。大事な

人をたくさん亡くして来た澪が、また大事な人を失ってしまうのは本当に勘弁

してあげてほしいと願ってました。祈りが通じて良かったです。源斉先生と

おりょうさんの生きる気力の強さに感謝です。

最後は澪の恋。小松原への想いに気づき始めた澪が可愛らしい。今後、この恋が

どうなって行くのかも読みどころの一つでしょうか。うーん、早く次が読みたい!

図書館が再開したら予約しなくては。

基本的には時代ものが苦手な私ですが、これはめっちゃハマりました。やっぱり、

高田さんの作品は良いなぁ。時間かかっても、絶対全巻制覇するぞー。