ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

若林正恭「完全版 社会人大学人見知り学部 卒業見込」(角川文庫)

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ずっと読みたかった若林さんのエッセイ集。どれだけ待っても図書館入荷して

くれないままなので、コロナの図書館閉館を機に購入。新刊図書買ったの一体

いつぶりだろう・・・もしかしたら、ちょっと前に記事にした喜国さんの作品

以来かもしれない^^;漫画はちょこちょこ買ってるんですけどね。

これ、文庫化に当たって単行本未収録が100ページ以上加筆されてるらしい。

文庫で読んで良かったかも。そして、奥付見てたらすごい文字を発見。この本、

なんと32刷目!!32回重版かかってるってことですよね。す、すごー。

純文学とか漫画とかならよくあるのかもしれないですけど、よっぽど人気のある

作家じゃないとこれだけの重版かからないんじゃないのかなぁ。それだけ、若林

さんが人気あるってことなんだろうな。なんだかんだで、オードリーって若林

も春日もテレビめっちゃ出てますもんね。テレビだけじゃなくてラジオも冠番組

持ってるし。若手の頃から今まで消えずにコンスタントに活躍し続けるお笑い芸人

ってやっぱり一握りだと思うから、才能あるんだろうなと思う。

さて、これの後に出たエッセイはだいたい読んでいるから、本書の若林さんは

一番尖って人見知りだった頃のエッセイが収録されていると思われます。本書の

最後の方で人見知り卒業見込みにまで成長していて、それ以降の作品は当然

ながら人見知りは(多分ほぼ)卒業している訳ですから。まぁ、その後の作品でも

面倒くさい性格はあんまり変わっていないようでしたけれど(苦笑)。私も基本

人見知りで小心者なので、出て来るエピソードはなんか共感できるなぁって

思えるものも多かったです。美容院に行って髪型指定出来ないとか(いつも

美容師さんにおまかせ)、スタバでトールとかグランデと言うのが恥ずかしい

とか。まぁ、スイーツは普通に使うけど。今風の横文字使うのはちょっと気恥ずかしい

ものはありますね。若林さん同様、私も自意識過剰なのかも。

趣味に関しては全然合わないものばかりでしたけど。アメフトやらプロレスやら、

格闘技がとても好きらしい。唯一共感できる趣味は本くらいだけど、読む作家も

私は読んだことない方ばかりでした。

若林さんって、すごくひねくれているようでいて、素直な人なんだなぁっていうのが

よくわかる。表面的にはあんまり感情的になるようなイメージがないんだけど、

内面ではちょっとしたことで悩んだり落ち込んだり。特に前半は人とのコミュニ

ケーションが上手く出来ず、一人もんもんと考え込んでしまうことが多い。あーでも

ないこーでもない、とぐるぐるいろんなことを考え過ぎてしまう。基本ネガティブ。

でも、読み進めて行くうちに仕事も定期的に入り初めて、いろんな経験を通して

いろんな人や物と出会ううちに、少しづつ考え方が変わって成長して行くのが

わかりました。そのきっかけは本を通してだったり、先輩の言葉だったり、岡本

太郎の太陽の塔だったりといろいろですが。そういうものを素直に吸収する力が

あるんだろうなと思いました。

あんまり先輩風吹かせるようなイメージがないのだけど、意外だったのは、

オードリーのラジオのハガキ職人から放送作家を目指すT君との関係。絶望的

なまでに人間関係が不得意な彼の才能を認め、なんとか彼が花開くように

気にかけてあげる面倒見の良さに驚きました。どこまでもネガティブな彼の思考を

なんとか上向きにしようと説得するところとか。他人に対して、そこまで踏み込む

ようなことをする人だとは思わなかったので。他人は他人、自分は自分と線引き

するようなタイプかと。よっぽどT君の才能を買っていたのでしょうけど。そこまで

気にかけていたT君の結末はちょっと残念でしたね。今は何をやってらっしゃるのか。

今でも、オードリーのラジオにハガキを投稿しているのかな。

それぞれのエピソードに若林さんらしさがあって、どれも面白く読みました。私は

やっぱり若林さんが好きだな。人嫌いで(今は大分違うけど)恋愛下手で(今は

結婚されたけどw)、面倒くさいところ(これは多分今も)も含めて人間くさくて。

ほとんど出て来ないけど(敢えて書かないようにしていたらしい)、相方春日さん

への想いもちょこちょこ伺えて、微笑ましかったです。なんだかんだで、仲いい

コンビなんだろうな。

文章は、正直前半部分なんかはかなり酷いけど、それも含めて若林さんらしいって

思いました。句読点の付け方がめちゃくちゃだったり。途中から大分改善されて

来た感じでしたけどね。編集者も、再販の時も敢えて直さないんだろうな。そこも

本人の成長の過程が伺えるところだと思うから。

人間、社会に出て仕事をするって大事なことなんだなっていうのがよくわかる。

自分には向いてないからとか出来ないからと端から決めてかかるんじゃなくて、

とりあえず何でもやってみることは大事だし、嫌なこととも向き合うことが必要だし、

それを受け入れて、いかに続けて行くかはもっと大事。

社会に迎合することは決して悪いことじゃないと思う。若林さんは、そうやって

今の芸能界で自分の位置を確立していったんだろうなと思いました。