ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

秋川滝美「ヒソップ亭 湯けむり食事処」(講談社)

f:id:belarbre820:20200712191130j:plain

秋川さん新刊。新シリーズになるのかな?続刊が出るのかはいまいちわかりませんが。

理由あって有名料亭の料理人を辞め、幼馴染が経営する素泊まりの温泉旅館『猫柳苑』に併設する食事処ヒソップ亭』の料理長になった真野章。厳選した食材と豊富な

名酒を揃え、様々な事情を抱えた客たちに料理を振る舞うが、章自身も心に鬱屈を

抱えていた――。

温泉旅館に併設された食事処ということで、海鮮系のお料理が多いですかね。

章自身が漁師と一緒に釣りに行くのが大好きなくらいですし。ただ、釣りの腕は

イマイチで、大抵釣果も寂しいものだったりするみたいですが(苦笑)。

それに、章は海鮮だけじゃなく、幅広い料理の知識があって、お肉料理もお手の物

ではあるみたいですけど。ラムステーキが出て来たのにはびっくりしたなぁ。

それに、極めつけは夜食用に作ったバゲットサンド!温泉旅館で出て来るもの

じゃないでしょ~とツッコミたくなりましたが、めちゃくちゃ美味しそうでした。

今はこんなコロナ禍真っ只中なので、旅行に行ける状態じゃないんで、猫柳苑に

泊まりに来る客たちが、すごーーーく羨ましかったです。まぁ、素泊まりで

温泉旅館に泊まるってことは、私はほとんどしたことないけども。やっぱり、

夜は浴衣で旅館の豪華な料理に舌鼓を打ちたいじゃないですか。まぁ、そういう

意味で、章のヒソップ亭は猫柳苑にかなり貢献してるんじゃないのかなぁ。

そもそもは、猫柳苑の主人である章の幼馴染の勝哉が、有名料亭を辞めた

章を心配してヒソップ亭を併設することを提案したという経緯があるのだけど。

いくら幼馴染でも、そこまで言ってくれる友達はそうはいないと思う。二人の

友情の深さが少し羨ましかったです。ただ、多分、章の料理の腕前はかなりの

もので、地方の温泉旅館の食事処の主人にしておくのはちょっと勿体ないのかも

しれませんけど。でも、傷心の章には、この温かい職場で料理を振る舞えるのが

何よりの癒やしなんでしょうね。

終盤、もうひとりの料理人を雇うことになるくだりはさすがに少し都合良すぎな

印象もありましたが、強力な助っ人料理人が来てくれるのは、章にとっても

猫柳苑にとってもいいことなんだろうな、と思えました。やっぱり、温泉旅館

で一泊するなら、お料理もついてて欲しいですもん。食事処で食べるのとは、

やっぱり特別感が違いますからねぇ。章も、ますます料理人としての腕が

鳴るんじゃないですかね。

これ読んで、めちゃくちゃ温泉旅館に行きたくなりました。早く旅行したいよー。