ミステリ読書録

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朝井リョウ「風と共にゆとりぬ」(文春文庫)

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ゆきあやさんが絶賛してらした朝井さんのエッセイ。これ、エッセイとしては

第二弾になるんですね。のっけから、前作のネタをぶっ込んで来ているので、

はい??となりました・・・。眼科医さんと衝突って、一体何があったんですか。

これはもう、前作『時をかけるゆとり』を読むしかありませんね。衝突ってことは

結構ハードな何かがあったんでしょうけど、本書での眼科医さんとの再会エピソード

は、なんだかほのぼのした感じでした。朝井さんがビクビクするほど、相手は朝井

さんに悪い感情を持っていなかったということで。

朝井さんの面白いところは、基本めちゃくちゃネガティブなのに、結婚式の余興で

思いっきり本気のダンスを披露したり、会社員時代の同期の何気ない一言を取り

あげて、仲間を巻き込んでまでバカバカしいいたずらを仕掛けようとしたり、

バレーボールがやりたいが為に、社会人バレーボールのチームにいきなり参加したり

と、好きなものや、やりたいと思ったことに対しては、羞恥心そっちのけで、

やたらにアクティブになるところ。バカバカしいことに本気で取り組むところが

いいですよね。こういう友達いたら楽しいだろうなーと思う。それに付き合って

くれる同僚や友達がいるのも羨ましいです。

取り上げたい面白エピソードだらけなんですが、個人的には家族とのエピソードが

好きかなー。特にハワイに家族旅行に行った時の話。ハワイにいるというのに、

朝井家のみなさんのテンションの低いこと低いこと。なんでハワイなんか行った

んだーーー!っていうツッコミをいちいち入れたくなりました。島内観光ツアーで、

予定より大幅に早く帰って来てしまう朝井家。予定時間まで観光を楽しむという

ことが出来ない人たち・・・正直、一緒に旅行には行きたくないかも(笑)。でも、

朝井家のメンバーみんなそうだから、特に誰も不満も漏らさない。だから、なんで

ハワイに行ったんだーーーっ。国内旅行で十分だったのでは・・・。でも、お母さん

が唯一ハワイでやりたかったことが、歯磨き粉を買うことっていうのにズッコケ

ました。しかも、『ものすごく前向きな感じの商品名』っていう、漠然とした情報

だけで、その目的の歯磨き粉を探し回った挙げ句、はっきりした名前がわからない

為、結局探せず仕舞いになってしまったという・・・悲しい。唯一の目的も果たせず。

結局、日本に帰って来た朝井さんが、○ンキでそれに該当する歯磨き粉を見かける

という切ないオチが。名前を知って、確かにものすごく前向きな商品名だな、と

思いました(笑)。

まぁ、他にもいろいろ抱腹絶倒エピソードが披露されているのですが、そこは割愛。

一番下品で笑えたのは、やっぱり最後のジロウのエピソードでしょうね・・・。

ジロウの漢字はご自由に思い浮かべください。朝井さんの必死さがひしひしと

伝わって来ました。うん、これは絶対に体験したくないな。若いのに、大変な思い

したんですね、朝井さん・・・。

 

とても面白かったです。ただ、エッセイの割に改行が少ないせいか、若干読みにくさ

を感じることも。題材にもよるんですけどね。思ったよりも読むのに時間もかかり

ましたし。でも、自虐ネタ満載の文章は好きですし、朝井さんの人柄の良さが

滲み出ているエピソードの数々に、ついつい吹き出してしまうこともたくさん。

眼科医の先生との衝突エピソードの詳細が知りたいので、前作もそのうち読んで

みようと思います。