ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

桂望実「結婚させる家」(光文社)

f:id:belarbre820:20200801200703j:plain

桂さん最新作。面白そうなタイトルだったので借りてみたのですが・・・うーん。

ちょっと、思ってたのと違っていたなぁ。婚活ものなのは間違いないのですが、

婚活小説としても、主人公の成長譚としても、どっちも中途半端な印象。一体

作者は何が一番書きたかったのかなぁと、ちょっと首を傾げてしまった。

主人公は、40歳以上限定の結婚情報サービス会社『ブルーパール』のカリスマ

相談員、桐生恭子、53歳独身。カップル成婚率NO.1の恭子は、更にブルーパール

の成婚率を上げる為、長期に売れ残っている大邸宅を借り上げて、会員同士で交際中

カップルを一週間お試しで住まわせて、結婚に対するイメージを作ってもらう

企画を打ち立てた。泊まりに来るのは、中高年ならではの悩みを抱えた、一筋縄

ではいかないカップルばかりなのだが――。

結婚前に同棲するべき、という意見をちらほら耳にするので、一つの家にお試しで

一緒に住んでみるというのは一見いいアイデアにも思えるのですが、まだ相手の

ことを好きでもない段階で、その家族も含めて一緒に生活するっていうのは、

私だったら絶対やりたくないなぁと思いました。この企画が変わっているところは、

家族ぐるみで一緒に住むところ。結婚後、相手の親と同居するかどうかも決めて

いない段階なのに、相手の両親やら親族と一緒に生活してみなければならないとは・・・なんか、ある意味地獄のような。まぁ、会員の年齢が年齢なので、相手の

親と同居するケースも多くなるからなのかもしれませんが。ただ、お試しで一緒に

住むのは両親だけではなく、人によっては兄弟姉妹や、バツがついている人の場合は

子どもだったりと、さまざまだったりもするのですが。

最初の方の二つのケースは体験したが故に真剣交際に発展して行くので、やってみて

良かったのでしょうが、三話目辺りから上手く行かないケースばかりになって行く。

恭子のアドバイスが的確になるにつれて、上手く行かなくなるケースが増えて行った

ような。恭子の良いところは、きちんとその人のことを思ってアドバイスしてあげる

ところだと思う。カップル達成率ばかりを考える人だったら、もっと上辺だけの

アドバイスをして、真剣交際に発展するよう働きかけると思うんですけど。

まぁ、最初の頃はそういうタイプだったみたいですが(退会後に別れるカップルが

多かったらしいので)。恭子自身も、この企画を通して、相談員として大事なことに

気づけたところは良かったと思います。ただ、途中からなぜかウォーキングに

はまって、カルチャースクールに入ったり、100キロのウォーキング大会に出場

すると言い出したりするのがよくわからなかったですけど・・・。53歳にして

将来の目標が出来るのはいいことではありますけどね。何か、恭子のキャラがぶれて

いて、いまいち掴みどころがないので、共感出来るのか出来ないのかよくわかりま

せんでした。お人好しなのは間違いないのでしょうけど(同じアパートの外国人に

捨て猫を押し付けられて、結局飼ってあげたりしちゃうし)。

それにしても、お試し同居に参加する婚活中の中高年たちのキャラ造形が酷すぎ。

男も女も、身勝手な考えの人ばっかりで、だからその年まで結婚出来ないんだよ!と

ツッコミたくなってばかりでした。自分に自信があるせいで相手から断られたら

逆ギレする男や、美人なんだから相手から選ばれて当たり前という高飛車な態度の

女もいたし(結局どちらも交際に発展せず終了)。結局、相手のことを知ろうとも

しないで、自分の理想ばかり押し付けるような人は結婚に向いてないってことなんで

しょうね。そういうことがわかっただけでも、彼らにとってこの同居生活に意味は

あったのかも。

ここで失敗した人たちが、今後いい人とめぐり会えるとはとても思えませんでした

けどね(苦笑)。