ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

貴志祐介「我々は、みな孤独である」(角川春樹事務所)

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貴志さん最新長編。ううむ。貴志さんどうしちゃいました?って感じの作品だった。

何かいろいろと中途半端感が・・・。ミステリーとしても、SFとしても。どっちにも

振り切れてない。話があっちこっちに飛んで、一体何が主体で書きたかったのか、

最後まで読んでもよくわからなかった。いろんな要素を詰め込み過ぎ。そもそもの

発端だった、企業の会長の依頼を中心に話が進んでいたら、こうはなってないと

思うのだけど。途中から、その依頼の件そっちのけで、いろんな人物が夢に見る

前世の話にシフトして行ってしまったから、物語の収拾がつかなくなってしまった

ように思う。結局、会長の依頼も有耶無耶なまま勝手に調査終了みたいな感じで

終わってるし。報告も助手に任せて本人逃亡だし。おいおい。これじゃ、お金

もらえるレベルじゃないよ。こんなんで、よく探偵業やってられるな、と呆れ

ました。

前世の夢の部分では、不必要に暴力的なシーンが出て来るし、拷問やらゲテモノ食べる

シーンとかもあるし、結構読むのキツかったです。現実ではヤクザやメキシコの

犯罪組織による残酷な暴力シーンにも引いたし。貴志さんらしい描写といえばそう

なんですけどね。そういうシーンが物語に必要ならばまだいいんだけど、無駄に

長くて、大して意味もないっていう・・・。私、今、なんでこれを読まされて

るんだ?と疑問に感じるシーンがいくつもあったり。

あと、メキシコの犯罪組織のボス、エステバン・ドゥアルテと通訳の会話に主人公の

茶畑が爆笑するシーンがあるのだけど、私にはさっぱりその面白さがわからなかった

です。通訳の訳し方が面白いってことなんだけど・・・音声にしないと、その面白さ

が伝わって来ないのかもしれませんが。通訳がしゃべる度に茶畑が爆笑するんだ

けど、私は全然笑えないので、すごい置いてきぼり感がありました(苦笑)。

終盤、それまで出て来た前世の夢に関する一つの答えみたいなものが提示されるの

だけど、何じゃそりゃ、とずっこけました。もうめちゃくちゃ。

ラストは突然震災で亡くなった茶畑の妻が登場して、感動話めいた流れになって

無理矢理終わらせた感満載だし。思いっきり風呂敷広げて、全く畳まないまま

終了って。一体ほんとに貴志さんは何が書きたかったのだろう・・・。

読み終えて、何も残らなかった。

読みやすいから何とか読み終えたけど。よく挫折しなかったなー、自分、と思い

ました。予約本ラッシュ前(今ラッシュ中)だったから良かったけど、読む本が

山積みだったら、間違いなく途中で挫折してたかも^^;

自分だけがこんなにダメだったのかと戦々恐々としていたのだけど、アマゾン評価

みたら、みなさん軒並みけちょんけちょんにしていたので、自分だけじゃなかった、

とちょっとほっとした次第。もちろん、評価している方もいらっしゃるので、好き嫌い

分かれる作品なのかもしれませんね。

とりあえず、読み終えた自分を褒めたいと思います(by黒べ)。