ミステリ読書録

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三津田信三「そこに無い家に呼ばれる」(中央公論新社)

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三津田さんの幽霊屋敷シリーズ(作中にこういう表記が出て来るのでそれを採用)

第三弾。今回も、河漢社の編集者、三間坂秋蔵によって持ち込まれた怪談話に、

作家三津田が現実的な解釈を加える――という体裁。今までの作品よりも

出て来る家自体の解釈が成されていない分、ちょっと食い足りなさはあるかも。

ただ、三間坂の実家の蔵に保管されていた、三つの記録(書簡)に関しての、

それぞれの繋がりに関しての三津田の解釈は、なるほど!と思わせてくれるもの

でした。内容的には似ているものの、全く無関係かと思われた三つの書簡が、

三津田の解釈に基づくと、きちんと繋がりを持っていることがわかりました。

三つの書簡には、どれも家そのものの幽霊が出て来ます。普段は空き地なのに、

ある一定の条件の元で突如現れる建売住宅に呼ばれ、惑わされる会社員の報告。

記述者には空き地にしか見えないのに、近隣住民には建っているように見える住宅

を探ろうとした顛末を自分宛ての私信として綴ったもの。精神療法の一つで、

様々なパーツを組み立てて、患者が箱の中に自分の心の家を建てる心宅療法を

行った、ある患者に関する精神科医による記録。

時代も場所も記述者もばらばらに思えるこの三つの記述の謎が、三津田の解説に

よって繋がって行く辺りは、さすがです。幽霊が出没する幽霊屋敷を題材にした

作品は多々あると思うけれど、家そのものが幽霊っていうのがなかなか面白い

ですね。海外のホラーだと結構類似作品があるみたいですけども(三津田と

三間坂の雑談調べ)。

ホラーとしてはさほどの怖さはなかったですが、今までの作品との奇妙なリンク

や符合、表紙に纏わるゾクッとするような法則――と、畳み掛けるような奇妙な

偶然(その実、作者が意図していたのかもしれませんが)の連鎖が明らかに

された場面では、背筋がすっと寒くなりました。毎回表紙のイラストが怖くって、

一人で読むときちょっと嫌だったんですよね(もちろん、今回の表紙も)。

特にイラストレーターの方に注文を出した訳ではなかったらしいのがまた。

あと、地味にラスト1ページが怖かったです・・・。一つづつ減って行って、

最後は・・・。京極さんの作品でもこういう文章の仕掛けは出て来たこと

あったなぁ(あれは別に、ホラーを狙っていた訳ではないけれども)。

ひとまずこれでシリーズ完結になるのかなぁ?書こうと思えばまだいくらでも

書けそうな感じもしますけれど。三津田さんは家を題材にしたホラーがお好き

なんでしょうね。普段は寛げる筈の家が、恐ろしい場所に変わってしまう。

次から次へと、よく考えつくなぁと思ってしまう。今回も今までと違った切り口で

面白かったです。

こうしてブログやってる時って、ほとんどが相方がいなくて一人の時だから、

記事考えるの地味に怖いんだよね、実は^^;家はいつでもほっと出来る場所

であってもらいたいものです。

ちなみに、私の周りで一つづつ増えてるものや減ってるものは今の所ありません。

ほっ。