ミステリ読書録

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東野圭吾作家生活35周年実行委員会編「東野圭吾公式ガイド 作家生活35周年ver.」(講談社文庫)

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たまたま東野さんの新刊と一緒に回って来た、東野さんの作家生活35周年を記念

して刊行された公式ガイド集。

今まで出版されたすべての作品の自作解説が入っていたり、読者による東野作品

人気ベスト10なんかも収録されています。東野さんの作品をまるっとおさらい

出来て、なかなか楽しめた一冊。

さて、私と東野作品の出会いは、おそらく高校生くらい。東野さんが作家デビュー

して何年も経ってないくらいの頃です。初めて読んだ作品は正直どれか覚えて

いないのですが、姉が買って持っていた、初期の頃の作品だと思います。多分

『卒業』か『白馬山荘~』辺りだと思うんですよね。実家に帰れば該当の本が

残っている筈です。何冊か持っていたから、どれが最初かはやっぱりわかんないけど。

当時、姉がミステリー小説にドハマりしていた影響で、私も姉の持っているミステリ

作品を片っ端から読んでました。その中に東野作品も入っていた訳ですが、正直、

当時は他の作家さんよりも印象は薄かった。この人の作品ぱっとしないなぁって

感じの印象。そのせいか、そこからしばらく読まない時期があって、東野作品から

遠ざかっていた時期がありました。それが、ガラッと変わったのは、多分『秘密』

辺りじゃないかな。『秘密』自体は、実は私はあまり好きな作品ではないのですが、

当時かなり話題になっていて、昔とは作風が変わっていることに驚かされて、

気になる作家の一人として、新刊を追いかけるようになりました。そこからは

飛ぶ鳥を落とすような活躍で、大人気作家になってしまわれましたけども。

自作解説でも述べられてらっしゃいますけれど、本当に当時は無名で売れない作家

さんだったんですよねぇ。今じゃ信じられないですけど。デビュー作から順を

追って解説されているので、当時どうやって売れるように書けばいいのか、かなり

試行錯誤されていたのがわかりました。今じゃ考えられないですよね。だって、

今はどんな作品書いたって、ネームバリューだけで売れるくらいの人気作家です

もんね(皮肉ではなく、事実として述べております)。

今回すべての作品のあらすじや自作解説を読んでいて、初期作品はだいぶ抜けて

いるなぁというのがわかりました。もちろん、読んだけど覚えてないのがほとんど

ではありますが^^;とはいえ、全部で96作品出ているそうですが、7割くらい

は読んでいるのじゃないかなぁ。途中からはリアルタイムで制覇しているし。

加賀作品とか最初から読み直したくなりましたねぇ。加賀さんのキャラの変遷の

理由とかにも触れていて、なるほど~そういう経緯があったのか~と目からウロコ

だったり。ご自身の解説はやっぱり誰が解説するより説得力があって、面白い。

驚いたのが、作家生活35周年の中で本が一冊も出なかった年が、たった一年間

しかなかったこと。確かに、コンスタントに出続けているよなぁとは思ってました

けど・・・すごい。しかも、その一年だって、本人が『意図して』出さなかったという

から、驚きです。出さなかったその理由にもびっくりだったけど。今の東野さん

からは絶対考えられない理由なんですよ!それだけ、売れることを意識していた

ってことんでしょうけど。

この、出し続ける筆力には、ただただ本当に脱帽。しかも、出した作品は、すべて

ご自分が絶対面白いと納得した作品ばかりというのだから。納得しない作品は

絶対世に出さないという信条があるそう。まぁ、こればっかりは個人の好みもある

から、好き嫌いは絶対読者によってまちまちだろうけれど。私だって苦手だとか

イマイチだと思った作品もたくさんあるし。でも、それ以上に、面白いと思った

作品の方がずっと多いんですよね。毎回、新たな試みがあったり、驚きがあったり、

バラエティに富んでいて、また次も面白い作品を書いてくれるだろうという期待を

持たせてくれる稀有な作家さんだと思う。これだけ量産していたら、飽きられても

おかしくないのに、これだけ毎回ベストセラーになるんだから、その魅力は推して

知るべし。大作家なのに、割とミーハーなところがあったり、読者サービス豊富

だったりするところも大好きです。ガリレオなんて、完全に福山さんに寄って書かれて

いたりするものね。そういう部分も、エンタメに特化した作家さんなのだろうな、と

思う。

読者による人気投票ベスト10は、まぁまぁ、納得のランキングだったかな。データ

が2012年のだから、今やったらまた違う結果になるかもしれませんが。1位は

やっぱりアノ作品でしたねぇ。ベスト10すべてが映像化されているというのも

すごい。映像の力があるからこそ、人気も高いのかもしれませんけど。『流星の絆

の3位はちょっと意外だったかな。私だったら何に投票するかなぁと考えると・・・

うーん。悩むなぁ。『容疑者X』か『新参者』かなぁ。

あともうひとつ、驚いたのが、東野さんが私財を投入してスノーボードの大会を

開催しているってところ。そ、そんなことやってたの?メディアで取り上げたこと

あるのかな?聞いたことなかったからびっくりした。でも、結構有名なスノーボーダー

が出場してるらしくて、かなり規模の大きい大会らしい。さすが金持ち・・・。

独身だし子供もいないから、そういうことに使えるんだろうなぁ。ま、もう使い

きれないくらい稼いでいるだろうけどさ。印税だけでも毎年凄そうですよねぇ。

東野さんのスノーボードへの強い愛を感じるエピソードでしたね。

改めて、偉大な作家であることがわかるガイドブックでしたね。ファンなら必読

ではないかな。読み返したい本がいっぱいになってしまった。

作家35周年、おめでとうございます(あれ、今年は36周年になるのかな?)。