ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

野村美月「月と私と甘い寓話 ストーリーテラーのいる洋菓子店」(ポプラ社)

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野村さん新作。タイトルも表紙も内容も、ラノベで出しても差し支えないような

内容ではありましたが、こうして図書館入荷してくれるのだから、単行本で

出してもらえるのはとてもありがたい。

仕事にも恋愛にも疲れ果てた三十三歳の七子は、ある日、以前立ち寄ったことの

ある、住宅街のはずれにひっそりと佇む洋菓子店を訪れた。以前訪れた時は

地味な茶色いお菓子ばかりを置いていたお店だったが、久しぶりに訪れてみると、

様子が一変していた。お洒落で可愛らしい佇まいのお店に入ると、ショーケースには

キラキラした美術品のようなお菓子が並び、執事のような長身イケメンの男性がいた。

イケメン執事は自らをストーリーテラーと紹介した。店内に並ぶお菓子の説明

や、それにまつわる物語を語り、客の買い物の手伝いをするのだと言うのだが――。

出て来るスイーツが本当に美味しそう。語部さんが語るスイーツの物語も魅力的

でしたし。こんなストーリーテラーがいるケーキ屋さんなら、通ってみたくなるなぁ。

でも、お客一人一人にこんな接客してたら、全然客はさばけないだろうな・・・。

クリスマスとかバレンタインとかどうするんだろう、といらない心配をしてしまった

(笑)。

語部さんとパティシエの糖花との関係がよくわからないまま物語が進んで行くの

ですが、最終話でその出会いや関係が明らかになります。語部さんの糖花さんに

対する冷酷な態度(仕事以外で話しかけるなという)の理由は、まぁ、だいたい

想像通りでしたね。こんな面倒くさいことしなくても、とは思いましたけど^^;

素直じゃないなぁ。語部さんは、もっとクールな人だと思っていたので、そこの

ギャップはちょっと萌えましたけど(笑)。振り回されてびくびくしている糖花

さんが可哀想だ。それでなくても、妹の同級生・令二からさんざん嫌な目に

遭わされて傷つけられて来たのに。令二のまわりくどい愛情にも辟易しましたけどね。

性格悪すぎてドン引きでした。こういう奴が将来ストーカーとかになるんだろうなぁ。

ま、糖花さんには語部さんがついているから大丈夫でしょうけどね。

糖花と語部さんのお店『月と私』のお菓子のモチーフが、全部、満月・半月・三日月

と、月にこだわっているところが面白いなぁと思いました。こういう縛りがあると、

いろいろと大変なところもありそうだけど。満月・半月は作りやすくても、三日月型

が特に。実物のお菓子が見てみたくなりました。

お菓子作りは私もちょこちょこやるのですが、糖花さんみたいに芸術作品のスイーツが

作れたら楽しいだろうなぁ。先日、ついに念願だったハンドミキサーを買いまして。

初めてロールケーキに挑戦してみたら、なかなか美味しく出来ました。生クリーム

や卵白の泡立てがこんなに楽に出来るなんて!!と感激しまくりながら作ってました

(笑)。今まで、手動でやると、必ず翌日筋肉痛になっていたのに、それも全く

なし(当たり前かw)。まぁ、プロは手動でやっても素早く泡立つんでしょうけど、

その技術がないもので^^;

今度はスフレオムレツとか作ってみたいなー。HMばんざい(笑)。

 

糖花の内面描写はあまり描かれなかったので、彼女の日常とか心情はもっと読んで

みたいですね。あと、語部さんとの恋愛模様の行方も気になります。

また続編あるといいな。スイーツと共に楽しみたい一冊ですね。