ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

ほしおさなえ「紙屋ふじさき記念館 カラーインクと万年筆」(角川文庫)

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シリーズ第三弾。和紙の奥深さを感じさせてくれるこのシリーズ、今回も新たな

和紙の魅力満載で素敵でした。今回は、主人公百花が、母親の実家・長野県の

飯田市を訪れるお話からスタート。百花は、飯田は水引の産地で、百花の祖母・

てるは、若い頃水引を作る内職をしていたことを知り、祖母から水引の結び方

を教えてもらう。夢中になっていろんな結び方を習い、いくつも作ると、百花は

それをつるし雛のように吊るして飾ることを思いつく。出来上がった水引飾りを

百花が大好きな組子障子の前に飾ると、思いの外見栄えがして美しかった。百花が

その写真をSNSに上げると、予想外の反響が――。

水引といえば、ご祝儀袋にくっついているくらいの知識しかないのですが、本書を

読んで、とてもいろんな種類の結び方があるんだなぁと勉強になりました。百花の

おばあちゃん、てるさんのキャラがとっても可愛らしくて素敵だった。てるさんを

囲んで、女性たちで水引を結ぶ場面がほのぼのしてて良かったな。なんとなくぎく

しゃくしていた実家の人間関係も、水引がきっかけで解消されましたしね。その後の

お話の中で、てるさんを講師に呼んで、ふじさき記念館で水引のワークショップを

やることになるのだけれど、私もすごく体験してみたくなりました。水引を使った

ピアスとかネックレスとかも実物を見てみたいなぁ。絶対可愛い。

今回、もうひとつ新たな試みがふじさき記念館に持ち込まれます。それは、インク

メーカーとのコラボ企画で、カラーインクとガラスペンのパッケージをふじさき

記念館に任せたいというもの。カラーインクにもガラスペンにもすっかり魅了されて

しまった百花だったが、藤崎から、数種類あるインクの名前の案を翌日までに

10個出して欲しいと言われ苦悩することに――。

万年筆のインクがそんなにカラフルになっているとは知らなかったです。『インク沼』

という言葉も初めて知りました。いろんな沼があるものだなぁ。しかし、確かに

ハマったらヤバそうな気がする。色鉛筆も何百種類のセットとかありますもんね。

そして、それを一時期本気で欲しいと思っていた経験が・・・(笑)。インク沼、

ハマったら絶対危険な気がするー^^;それに、ガラスペンなんてものが手に

入ってしまったらと思うと。もう、絶対ハマるやつでしょ。ガラスペンは多分

実物を見たこともあると思うんですけど、想像するだけでうっとりしちゃいますね。

万年筆って昔からすごく憧れがあります。安いやつなら使ったこともあるのですけど、

やっぱり高級なものは書き心地とかも違うんだろうなぁと、羨望の目で売り場を

眺めたことが何度あることか。モン○ランのとか、めっちゃ憧れるー。いつか

手に入れたいなぁと思うけれど・・・使う場所がないから結局実現しなさそう^^;

でも、ガラスペンも気になるなぁ。どんな書き心地なんだろう。カラフルなインクで

書いたら気分も上がりそうです。

それにしても、百花は本当にいろんな才能を持った子ですねぇ。手先の器用さも

ですが、その発想力が何よりすごい。水引をつるし雛みたいに吊るすとか。カラー

インクのネーミングも、いくつも思いつくし。こういう人が、企業とかで新しいものを

生み出して行くんだろうなーと思いますね。でも、百花はふじさき記念館の仕事が

すごく合っていると思うなぁ。今はバイトだけど、大学卒業の時には、正式に

社員にスカウトって流れになりそうな気が。まぁ、百花ならどんな企業に行っても

活躍できそうではありますけど。根が真面目だし、性格は素直でアイデアも豊富

だから。いくつもの可能性がありそうで、若い才能っていいなぁといつも羨ましく

思いますね。

相変わらず藤崎さんとの距離は縮まらないけど、少しづつ彼に百花の才能が認め

られて来ているのは感じます。これから二人の関係がどう変化するのかも楽しみです。