ミステリ読書録

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北山猛邦「天の川の舟乗り 名探偵音野順の事件簿」(東京創元社)

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世界一気弱でやる気のない探偵・音野順シリーズ第三弾。本当に久しぶりに続編が

出て嬉しいです。でも、後ろの掲載月日を見ると、四作のうち書き下ろしの四話目

を抜かして、2008年と2009年に書かれたものなんですね。なぜこんなに

単行本が出るまで間が空いてしまったのか・・・。北山さん側の問題だったのかなぁ。

体調不良でもあったのだろうか。間が空きすぎて、前の話なんか全く覚えていなかった

のだけれど、気弱な音野と強引な白瀬のコンビは気に入っていたので、今回も楽しく

読めました。音野のやる気のなさが相変わらずで、笑っちゃいました。でも、白瀬に

発破をかけられると、ごにょごにょと文句を言いつつ、真面目に謎解きをしちゃう

辺り、お人好しというか、流されやすいというか(苦笑)。憎めないキャラだなぁ

と思いますね。実際近くにいたら、ちょいちょいイラッとさせられそうではあります

けどね(苦笑)。

 

では、各作品の感想を。

『人形の村』

友人の旗屋が過去に経験した不思議な体験の謎を解くお話。五年前、オカルト雑誌

の編集部でバイトをしていた旗屋は、読者から届いた一通の葉書が目に留まる。

その葉書には、自分の家には髪の毛が伸びる日本人形があり、その髪は長年伸び

続けて今では腰のあたりまでに至っているという。これは呪いなのだろうか、

というものだった。気になった旗屋は葉書の主の元に調査に赴くのだが――。

呪いの人形の顛末は皮肉な結末でした。騙されて翻弄されまくった旗屋は気の毒

ではあるけど、その時に真相に気づいていたらもっと怖い目に遭っていたかも

しれない訳で。鈍くて良かったのかも。もらった10万は確かに使えないですね

・・・。神社とかに寄付すれば良いのかも?wこんな曰くのある人形を引き取りたい

と申し出た白瀬の感覚はどうなっているのだ、とちょっと理解不能でした・・・。

 

『天の川の舟乗り』

音野と白瀬の探偵事務所に女性の依頼人がやってきた。彼女が住む金延村には金塊祭

という祭があるのだが、その祭で毎年使われる金塊を盗むという予告状が届いた

という。しかし、実際には、金塊とは名ばかりの、単なる石の塊らしいのだが。

怪盗マゼランと名乗るその予告状の主の目的とは何なのか。祭を見張っていて

欲しいと頼まれた二人は、彼女の住む村へと調査に向かうのだが――。

空飛ぶ舟の種明かしは、ちょっとアクロバティック過ぎて現実的ではないよなぁ

とは思いました。こういう大胆なトリックは、読む分には面白くて好きですけどね。

UFO研究会のメンバーたちは何の為にいたのかよくわからなかったけど(^^;)、

存在は面白かったです。前の話に出て来たんだろうけど、一切覚えてなかったです

(笑)。犯行動機は完全に金田一少年ノリでしたね^^;

 

『怪人対音野要』

ドイツの国立楽団で指揮者として活躍する音野要は、楽器の査定をして欲しいと

頼まれ、英国のチェシャ州チェスター郊外にあるバーンズ城にやってきた。

しかし、滞在中に殺人事件が起きてしまう。犯人はバーンズ城に出没するという

怪人なのか――。

地下通路の奥にマントと凶器を捨てた方法には目が点。ほんとにこれが可能だったら

面白いですけどね。

要さんは音野順の兄なんだけど、180度性格が違いますね。こういう出来た兄が

いるから余計に音野が引っ込み思案になっちゃったのかなぁ。

 

『マッシー再び』

二話目に出て来た金延村の真宵湖に伝わるマッシー伝説が再び登場。二話目の

依頼人、乙姫さんも再登場。金延村に観光に来ていた客が道の外れで亡くなっている

のが発見された。死因は頭部の損傷だが、遺体には全身を強打したような跡が

あり、その側には金塊祭で使われるフェイクの金塊が落ちていた。そして、遺体の

近くにはマッシーの足跡らしきものが――。

浮き輪をアレの代わりにして神輿を運ぶというアイデアにはビックリ。これもまた

実現可能かどうかはともかく、普通の人ではちょっと思い浮かばないトリックだよ

なぁと思いました。

どれもこれもトンデモトリックばかりで、北山さんの頭の中はどうなっているのだ

ろうと思いました(褒めてますw)。個人的にはここまで振り切ってもらた方が

面白く読めるし好き。実現可能かどうかはさておき、ね。

第二弾から随分と間が空いて本書が出ましたが、次はできればもう少し

インターバルを短くして出して頂きたいですね。