ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

東野圭吾「白鳥とコウモリ」(幻冬舎)

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東野さん最新長編ミステリ。若干予約に乗り遅れたので回って来るのに時間かかり

ました。東野さんの作品は発売日に予約しても絶対一番手にはなれないもんなー。

今回は発売日予約出来なかったから仕方がない。

久しぶりに総ページ数が500超え。なかなかのボリュームでした。リーダビリティ

があっても、さすがにちょっと時間かかってしまった。

善良で良い評判しか聞かない弁護士が何者かによって殺されるところから始まります。

しばらくして、容疑者の男が捕まり、自分がやったと自供します。しかし、被告の

男の一人息子は、父親の言うことがどうしても信じられない。何か裏があるのでは

と思い始める。一方。被害者の一人娘も、被告が語る自分の父親の姿に違和感を

覚え、被告は嘘をついているのではないかと考える。真実を知りたい二人は、

それぞれに事件を調べ始めるのだが――というのが大筋。

今回もぐいぐい読まされたのは間違いないのですが、丁寧に物語を追いすぎて、

少々冗長過ぎるきらいがあるかな、と思いました。被告側の家族、被害者側の

家族、30年前の殺人事件の関係者家族、弁護士、刑事・・・と登場人物が多岐に

亘って、それぞれの視点で語られるから、余計にまだるっこしい感じになって

しまったような。美しい白鳥と醜いコウモリが反転する真相は、なんとなく予想が

つきましたし。

ただ、真犯人に関しては予想外でしたけど。その動機もねぇ・・・。今どきといえば、

今どきの動機なのかもしれませんけど。こういう動機で殺人を犯す人間は、私には

理解不能でしかないのですけども。30年前の真犯人の動機の方がよっぽど理解

出来ますね。ただまぁ、殺人という手段は、それがどんな動機であれ、誤った

方法なのは間違いないところだと思いますが。

容疑者の息子・和真が、どんな時でも真摯な態度で事件に向き合っているところに

好感が持てました。被害者の家族や、30年前の事件の容疑者家族に対しても、

心から謝罪の感情を向けていましたし。容疑者の家族だからといって、自分とは

関係ないという態度を取る人もいると思うのですが。父親の犯罪に対して戸惑い

ながらも、きちんとその現実を受け止めて、真実と向き合おうとする姿勢が

良かったですね。そうした真摯な態度が、被害者の一人娘である美令にも好ましく

映ったのでしょうね。普通なら憎悪の感情を覚える対象であるにも関わらず。

二人の微妙な関係にはドキドキさせられました。明らかにお互いに意識している

感じがありましたからね。でも、二人の関係を考えると、恋愛に発展するのは

難しいのかなぁとも思いました。最後までどうなるかハラハラしながら読みましたが、

少し明るい未来が感じられてほっとしました。美令のその後が心配でしたが、

良い理解者がいてくれて救われましたね。その人物、所々でイラっとさせられた

こともあったのですけど。美令の言動から、その聡明さを感じてスカウトしたの

だとは思いますけどね。こうして前を向いて働くことが出来ているのだから、

いつか、彼女の方から和真のところに連絡する日が来るのは間違いなさそうです。

それは、そんなに遠い未来じゃないんじゃないかな?そうだといいな、と思いました。

読ませる力はさすがだとは思うのですが・・・帯はさすがに煽りすぎじゃないかな?

白夜行を超えるほどとは思えなかったです。東野さんご自身もかなりの自信作

のようでしたが。内容的には、もう少しコンパクトにまとめても良かったのでは、

と思いました。