ミステリ読書録

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朱野帰子「わたし、定時で帰ります。ライジング」(新潮社)

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シリーズ第三弾。図らずも管理職に就いてしまった結衣は、生活の為にわざと残業する

部下に悩まされる。残業をしなければ生活が出来ないと訴える部下の気持ちも汲んで

あげたい結衣は、残業せずに業務を遂行したら給料を上げるよう、会社に訴えかける

ことを決意する。一方、復縁した晃大郎は、入籍直前で仙台支社に出張を命じられて

しまい、婚姻届を出せないままだった。仙台でも大量の仕事をこなしているようで、

メールすらまともに返って来ない晃大郎の身を心配する結衣だったが――。

今回も、途中は理不尽な社員たちに振り回される結衣が気の毒になりつつ、最後は

スカッと読み追われて痛快でした。しかし、結衣の周りの社員って、どうしてこう

自分勝手なモンスターばっかりなんですかね。生活残業に関しては、相方の会社

の同僚にも結構いるみたいなので、残業するなという風潮が叫ばれる昨今では、

かなりリアルな問題なんだろうな、と思えました。そもそも、会社員の平均年収が

昔とは段違いですもんね。残業しなければローンも返せないし、子供も育てられない、

と嘆く人はたくさんいると思います。かといって、数時間で出来る仕事を三日かけて

やろうとする人間の神経は全く理解不能。私は圧倒的に結衣のように仕事は早く

終わらせてさっさと帰りたい派なので、時間短縮出来る方法があるなら、絶対

そちらを選びます。早く出来るものを、わざとだらだらやるなんて、もっての他だと

思う。そういう人間って、どれだけ社歴が長くなっても仕事が出来る会社員には

なれないんじゃないかなぁ。残業代が欲しい気持ちは理解出来ますけど・・・。

でも、そういう社員の気持ちもしっかり汲み取って、会社と戦おうとする結衣は

すごいと思う。普通だったら、とにかく会社の方針なんだから、残業はなるべく

しないで、と言うくらいしか出来ないと思うけど。自分が戦うことで、会社から

見放される危険もあるわけですし。そこで、社員の給料のベースアップを進言する

辺りも、ものすごい強心臓ですよね。誰もが給料上がって欲しいと心の中では願って

いるものだけど、それを口に出来る人なんてほとんどいないはず。だいたい、

そんな要求が通るとも思えないし。それでも、それをやり遂げた結衣はすごい。

その裏には、社長なりの思惑があったことも事実ではあるけども。結衣はやっぱり、

上に立つべき人材だと思うな。こういう上司の元で働けたら、会社員として働くのも

悪くないって思えます。まぁ、私は普通の会社で働いたことがないので、あくまで

理想ってだけですけども。

前作で晃大朗とよりが戻って良かったなぁと思っていたら、入籍直前で相手が

仙台出張とは。その後も度々すれ違っていて、ほんとにやきもきさせられました。

お互い思い合ってる筈なのに、きちんと言いたいことが伝えられない環境って

辛いだろうなぁ。二人のラブラブなシーンがもう少し見たかった。晃大郎も、

ワーカホリックの果てに倒れて結衣と別れる羽目になったのに、全然懲りて

ないんだもんな。まぁ、それは会社が悪いとも言えるけど。それにしても、晃大郎

や結衣の年収にはちょっと驚いた。結衣は管理職だし、晃大郎はあれだけ実績

あげて長時間馬車馬のように働かされて、その年収!?と。会社に搾取されすぎ

でしょ。ちゃんと、仕事した人が報われる会社じゃないと、社員は辞めて行く

ばかりですよね。今回、結衣の図らいで晃大郎の年収が上げてもらえることに

なって良かったですよ。それでも少ないくらいじゃないかと思うけど。晃大郎の

欲のなさにはびっくりだった。

結衣という伴侶を得ることになって、少し欲が出て来て良かったです。それに反して、

結衣の貯金のなさにもびっくりだったけど^^;女性で年収500万近くもらって

いて、全然貯金がないって、ヤバすぎませんか。よっぽど飲み歩いてたんでしょうか。

高い洋服は持ってないって言ってたのに。一体何に使ってたんだか。謎。

晃大郎は晃大郎で、当初のあの年収で、中古とはいえあの値段のマイホームを結衣に

相談もせずに買ってしまうというのもどうなんだ、とは思いましたけどね。まぁ、

七千万もしなくて良かったですけど^^;二人で節約すれば十分返して行けるとは

思いますけど・・・結衣がそれに耐えられるのやら。ま、晃大郎はある程度しっかり

した経済観念持ってるみたいだから、大丈夫かな。

いろいろあったけど、最後はハッピーエンドでほっとしました。次はもうちょっと

二人のラブラブシーンをお願いします(苦笑)。

もちろん、脳内では結衣は吉高さん、晃大郎は向井理のビジュアルで読んでました。

特に晃大郎はもう、向井理でしか考えられない・・・。続編もドラマ化して欲しい

なぁ。