ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

恩田陸「薔薇のなかの蛇」(講談社)

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実に17年ぶりの理瀬シリーズ。この日をどれだけ待っていたことか・・・!!!

もう、もう、読んでいる間中興奮しっぱなし。私が一番読みたかった恩田さん

らしいゴシックミステリの王道をそのまんま行くような内容。そう、私が求める

恩田陸はこれなのよ!と思いながら読んでました(笑)。いやー、堪能したな。

ちゃんと本格ミステリだし。連続殺人だし。イギリスの館が舞台だし。理瀬は

相変わらずクールビューティで素敵だし。最高だ。17年ぶりに出たとはいえ、

理瀬自身の時間は数年しか進んでおらず、まだ20代。とはいえ、少し大人の

レディになった理瀬はミステリアスに更に磨きがかかっていて、魅力も毒も更に

増したような感じ。いいねぇ。まぁ、前作までのお話をきれいさっぱり忘れていて、

比較もなにもないもんだけどさ。私が恩田ミステリの虜になった『三月は深き紅の

淵を』から読み返したくなりますねぇ。このシリーズはほんと、恩田さんの魅力が

ぎゅっと凝縮されていると思う。

とと、少し記事が興奮気味ですみません。内容の感想よね。本書は、確かに理瀬

シリーズなんだけど、語り手は理瀬ではなく、イギリスの貴族・レミントン家の

長男・アーサー。だから、どちらかというと理瀬は脇役として登場します。まぁ、

目立つ存在なので十分ヒロイン級の活躍はしますけれど。アーサーにとって、敵

なのか味方なのか終盤過ぎてもわからない、ミステリアスな存在として異様な

オーラを放っていて、不穏さが半端ない。アーサーの妹・アリスの友人として

レミントン家のパーティに招かれています。パーティの主でレミントン家の当主

オズワルドが、このパーティの間に一族に伝わる『聖杯』を披露するとの噂が

まことしやかに囁かれる中、屋敷の敷地内で惨殺死体が発見される。折しも、

屋敷の近くでは世間を震撼とさせた猟奇的な『祭壇殺人事件』が起きていた。二つの

事件に関連はあるのか――。

猟奇的な事件の真相は、終盤に割合あっさり明かされます。もうちょっと引っ張って

も良かったではとも思いましたが、犯人の告白があまりにも淡々としすぎているので、

かえってぞっとしました。『祭壇殺人事件』の方の犯人の遺体の運び方にも。

爆破殺人の映像を想像すると気持ち悪くなったし。特に、犬を巻き込んだのは

許しがたいものがありましたね。恩田さんの作品って、ちょこちょこエグい描写が

出て来るのよね。以前読んだ鹿ボールの衝撃は未だに忘れられない・・・。動機

がまた、そんなことの為に?って思うようなものだったので・・・余計に腹が立ち

ましたね。サイコパスってこういう人間のこと言うんじゃないかなぁ。

アーサー狙いのあの女性の正体には一番驚かされたかも。単なる俗物としか思って

なかったからね。

アーサーと理瀬はまたどこかでニアミスしそうですね。結局二人は敵同士なのかな。

お似合いな感じもするけれど。

ブラックローズハウスのゴシックな雰囲気は最高でした。この建物の真の目的には

驚かされましたけど。なんか、いろいろ不穏な歴史がたくさんありそうなレミントン

家。理瀬の一族との関わりもまだまだ明かされない部分が残されていそうだし、

今後の展開が気になります。次はもうちょい短いインターバルで出して頂きたいなぁ。

でも、次は理瀬が日本に帰った物語が読みたいかな。イギリスに留学している理瀬も

良いけれど、やっぱり日本が舞台の方がこのシリーズにはしっくり来る気がする。

装丁も作品と見事にマッチしていて、素晴らしかった。私が一番好きな恩田ワールド

が読めて嬉しかった。アマゾン評価ではミステリ部分で微妙な意見もちらほら

見かけましたが、個人的にはこの雰囲気が味わえただけでも十分満足です。ミステリ

としても私は面白かったけどね。