ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

秋川滝美「ヒソップ亭2 湯けむり食事処」(講談社)

f:id:belarbre820:20210716195712j:plain

素泊まり温泉旅館の中の食事処ヒソップ亭』を舞台にしたシリーズ第二弾。

せっかく前作で、章一人が切り盛りしていたヒソップ亭に、安曇という働き者の

料理人が加わったというのに、世間の自粛ムードの波はヒソップ亭にも

押し寄せて来ることに。そのうえ、安曇のもう一つの勤め先の鳥料理屋が潰れ、

安曇は職を失ってしまう。このままでは安曇の生活が立ち行かなくなってしまう。

章は、なんとか安曇の勤め先を見つけてあげたいと焦るが、飲食業界はどこも

人を雇う余裕がないところばかり。悩む章のもとに、意外なところから救いの手が

――。

ヒソップ亭にもやっぱりコロナの影響が出始めました。はっきりコロナという言葉は

出て来ませんけれども。敢えて出さないようにしているのでしょうね。でも、旅行

業界も飲食業界も大打撃、みたいな描写は出て来ますから、明らかに今の世相を

反映させています。まぁ、やっぱりそうなりますよね。ただ、ヒソップ亭自体は

そこまで利用客が減っている訳ではないようで(もともとそんなに多い訳では

ないからというのもありますが)、常連さんたちのおかげもあって、なんとか

やっていける程度の状態を保っているようで、ほっとしました。ただ、新たに

加入した安曇さんの身の上は心配になりましたが。ヒソップ亭では修行も兼ねて

週二日の勤務で、メインの勤め先の鳥料理店は、かなりのブラック会社の上、

不況の煽りをモロに受けて倒産。慌てて次の仕事を探して見つかったものの、

元の勤め先以上のブラックぶり。彼女の一週間のスケジュールは殺人的で、章や

桃子が心配するのも無理ないなと思いました。なんとか、ヒソップ亭の新たな

試みが成功して、こちらメインで働けるようになるといいなぁ。ヒソップ亭で

働いている安曇さんは、とても楽しそうだし。本当は、こちら一本で働きたい

んだろうなぁ。章は腕も超一流だけど、人柄も最高ですからねぇ。こんなお人好しの

料理人の元でだったら、きっと安曇さんも働きやすいし、勉強にもなるんじゃない

かな。相変わらず秋川さんの作品には悪い人が出て来ないですね。お人好しばっかり。

でも、今こんな世の中だからこそ、こういう人情味溢れる作品を読むと心が洗われる

気がする。きっと私も疲れているんだろうな。優しい物語が読みたいって時には、

秋川さんの作品はいいですね。

自粛が明けたら、温泉入って美味しいごはん食べに行くんだ。絶対に。