素泊まり温泉旅館の中の食事処『ヒソップ亭』を舞台にしたシリーズ第二弾。
せっかく前作で、章一人が切り盛りしていたヒソップ亭に、安曇という働き者の
料理人が加わったというのに、世間の自粛ムードの波はヒソップ亭にも
押し寄せて来ることに。そのうえ、安曇のもう一つの勤め先の鳥料理屋が潰れ、
安曇は職を失ってしまう。このままでは安曇の生活が立ち行かなくなってしまう。
章は、なんとか安曇の勤め先を見つけてあげたいと焦るが、飲食業界はどこも
人を雇う余裕がないところばかり。悩む章のもとに、意外なところから救いの手が
――。
ヒソップ亭にもやっぱりコロナの影響が出始めました。はっきりコロナという言葉は
出て来ませんけれども。敢えて出さないようにしているのでしょうね。でも、旅行
業界も飲食業界も大打撃、みたいな描写は出て来ますから、明らかに今の世相を
反映させています。まぁ、やっぱりそうなりますよね。ただ、ヒソップ亭自体は
そこまで利用客が減っている訳ではないようで(もともとそんなに多い訳では
ないからというのもありますが)、常連さんたちのおかげもあって、なんとか
やっていける程度の状態を保っているようで、ほっとしました。ただ、新たに
加入した安曇さんの身の上は心配になりましたが。ヒソップ亭では修行も兼ねて
週二日の勤務で、メインの勤め先の鳥料理店は、かなりのブラック会社の上、
不況の煽りをモロに受けて倒産。慌てて次の仕事を探して見つかったものの、
元の勤め先以上のブラックぶり。彼女の一週間のスケジュールは殺人的で、章や
桃子が心配するのも無理ないなと思いました。なんとか、ヒソップ亭の新たな
試みが成功して、こちらメインで働けるようになるといいなぁ。ヒソップ亭で
働いている安曇さんは、とても楽しそうだし。本当は、こちら一本で働きたい
んだろうなぁ。章は腕も超一流だけど、人柄も最高ですからねぇ。こんなお人好しの
料理人の元でだったら、きっと安曇さんも働きやすいし、勉強にもなるんじゃない
かな。相変わらず秋川さんの作品には悪い人が出て来ないですね。お人好しばっかり。
でも、今こんな世の中だからこそ、こういう人情味溢れる作品を読むと心が洗われる
気がする。きっと私も疲れているんだろうな。優しい物語が読みたいって時には、
秋川さんの作品はいいですね。
自粛が明けたら、温泉入って美味しいごはん食べに行くんだ。絶対に。