ミステリ読書録

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碧野圭「菜の花食堂のささやかな事件簿<4> 裏切りのジャム」(だいわ文庫)

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シリーズ第四弾。今回も、食に関する様々な謎を前にして、菜の花食堂の靖子先生の

鋭い推理が冴え渡ります。ほのぼのした靖子先生ですが、今回菜の花食堂を貶める

ことをした人物に対して、かなりの怒りを持って立ち向かいます。靖子先生の意外

な一面が伺えましたね。でも、どんな時でも、どこまでも食に対して誠実な態度を

貫く靖子先生はとてもかっこ良かった。こういう人が作るお料理は、絶対美味しいに

決まってるだろうなぁと思えました。やった側の人間の身勝手さには辟易しました

けれどね。あんなことは絶対にやってはいけないし、許すべきじゃないです。

捨て犬のお話は、捨てた家族に腹しか立たなかったけれど、最後は一番大事にして

くれる人の元にもらわれて行くことになって、良かったなぁと、胸を撫で下ろし

ました。あのまま、あの家族の元に返されても、きっと幸せにはなれなかったんじゃ

ないかなぁ。ただ、あのまま菜の花食堂のマスコット犬として飼われても幸せだった

とは思うけれどね(ちょっと残念だった)。でも、靖子先生の年齢を考えると、

躊躇するのもわかりますし。命を預かる訳だから、ちゃんと最後まで面倒見れる人

が飼うべきですよね。

今回、優希と川島さんにもちょっとした進展が。まだその手前といった感じでは

ありますが。優希が、ちゃんと自分の気持ちに素直になれたのは良かったですね。

いろいろ言い訳してて、素直じゃないなぁと思っていたから。靖子先生と香奈さんは

とっくに気づいていたのですね。川島さんの提案もあるし、次回はもっと二人の

距離が近づきそうで、楽しみです。

それにしても、靖子先生のお料理は素材の味を生かした絶品料理ばかりで、本当に

美味しそう。料理教室のお料理も、食堂のお料理も。こういうお料理が作れたら、

家庭円満になりそうだ(笑)。