ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

青木祐子「レンタルフレンド」(集英社)

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『これは経費で落ちません!』が評判の良い青木さんの新作。本当は『これは経費~』

の方が読みたいのだけど、そちらは人気が高くてなかなか借りられないので、

まずは新作のこちらに手を出してみました。

タイトル通り、レンタルフレンドを職業にしている主人公の七実と、彼女に依頼を

してくる様々な顧客の物語。デザートブッフェに一緒に行って欲しい、観劇に

付き合って欲しい、自分の入院の間に飼い猫の面倒を見て欲しい、婚約者が主催

するパーティに一緒に出席して欲しい・・・様々な理由で七実にレンタルフレンドを

依頼してくる人々の悲喜こもごも。

結婚式のサクラに人をレンタルするっていうのは聞いたことあるけど、いろんな

理由で友達をレンタルしたい人がいるものだなぁと興味津々でした。私も友達少ない

けど、わざわざデザートブッフェに行くのにお金出してまで一緒に来てもらおうって

人の気持ちはよくわからない。まぁ、一人で行く勇気が出ないって気持ちはわかる

けど。でも、それぞれに理由があって七実に依頼している訳で。利用するのは、

友達がいない人ばかりでもないし、寂しい人ばかりでもないけど(もちろん、そういう

人も多いだろうけど)。こういう仕事が成り立つんだから、現代社会っていろんな

意味で孤独な人が多いのかな、と思わされました。

知らない人だからこそ、何でも打ち明けられるって気持ちはわかりますしね。とにかく

誰かに話を聞いてもらいたいって人も多いだろうし。それなりに需要はありそうです。

そういえば、少し前に『レンタル何もしない人』ってのも話題になりましたよね。

ただ、一緒にいるだけで特に何もしないけど、意外とニーズがあるって聞いて、

びっくりしましたっけ。

何度も依頼が来ると依頼人と本当の友達になっちゃいそうな気もしますが、七実

そういう点では、ちゃんと一線を引いているところがあって、プロだな、と

思いました。こういう職業ならなおさら、仕事とプライベートの境界線は絶対

必要でしょうから。でも、若いうちじゃないと出来ない仕事って気もするなぁ。

一話目の依頼人の大学の仲間たちには腹が立って仕方なかったです。ほんと、

嫉妬からマウント取りたがるとか、最低です。そんなだから自分の希望の職種に

就職出来ないんだよ!ってツッコミたくなりました。

4話目の依頼人の婚約者はもっと最悪。何だ、コイツ、と思いました。こんな男に

振り回される女性の方が気の毒です。終盤、七実依頼人と元カノが結託して

相手をやり込めるところはスカッとしました。もっとやってやれ!と思っちゃった

くらい。依頼人が最後に本当の幸せを見つけられて良かったです。