ミステリ読書録

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小路幸也「グッバイ・イエロー・ブリック・ロード 東京バンドワゴン」(集英社)

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シリーズ第16弾。年に一度のお楽しみって感じですね(しゃばけシリーズ同様)。

お盆に帰る親戚の家って感じでしょうか。ただ、今回の舞台は遠く離れたイギリス。

シリーズ内ではまだコロナは反映されていない様子で、普通にイギリスに行って

帰って来れる模様。なんとも羨ましい。私たちが隔離期間もなしに海外へ行ったり

来たり出来るようになるのは、一体いつになるのやら。

さて、なぜ今回の舞台がイギリスなのかと申しますと、堀田研人が率いるバンド

<TOKYO BANDWAGON>が、イギリスのロックミュージシャン・キースの計らいに

よって、彼のスタジオでレコーディング出来ることになったから。喜び勇んで

イギリスにやって来た研人とバンドのメンバー二人、プラス我南人は、イギリス

滞在の間、藍子とマードック夫妻の家に居候させてもらうことに。しかし、楽しい

イギリス滞在になるはずが、突然、マードックが盗難絵画の日本への密輸事件の

参考人として、警察の事情聴取を受けることに。聴取は滞りなく終わった筈だった

が、なぜかマードックがその後行方不明になってしまう。待てど暮せど帰って

来ないマードックを心配する藍子と研人たち一行。マードックは一体どこに行って

しまったのか。東京の堀田家も総動員して、いなくなったマードックを捜すことに

――。

今回は舞台がイギリスということで、普段の堀田家の朝食風景が描かれなかったのが

ちょっと残念。一応、冒頭でちらっと朝の風景は出ては来ますけど、勘一さんの

めちゃくちゃな食べ合わせとか、かんなちゃん鈴花ちゃんのほんわか席決めとか、

我南人さんの空気読めない発言等々の、いつものほのぼのやり取りは出て来なかった

ので。どちらかというと、スピンオフ的な扱いの作品でしたね。

マードックさん失踪の真相とその顛末は、いつもながら、かなりご都合主義的な

展開でしたね。このシリーズには大団円が似合うとはいえ、さすがにちょっとやりすぎ

なのでは、と思わなくもなかったです。そもそも、動機はともかく、やったことは

誘拐・拉致監禁という犯罪ではありますし。あと、サチさんを事件解決の立役者に

しちゃうのもさすがにねぇ。サチさんは、あくまでも堀田家を影から見つめ、見守る

存在って位置づけだと思っていたので。今回、自由にサチさんと言葉を交わせる

ジュンという新キャラ登場で、その前提が壊れて行きそうな感じを受けました。

まぁ、サチさんにとっては、意思疎通ができる人間が出来たということで、今後

楽しみが増えたでしょうけれど(紺に関しては、ほんの一時しか意思疎通出来なかった

ので)。一瞬でイギリスに行けちゃう身の上も羨ましいなぁ。一度行った場所

ならば一瞬で行くことが出来てしまう能力、ほんと欲しい。サチさんならコロナに

感染する心配もないですもんね。

まぁ、今回もいろいろありましたけど、最後には我南人さんの『LOVEだねぇ』

問題が解決って辺りは、堀田家のらしい大団円なのかな。我南人さんって

一見ちゃらんぽらんに見えて、実は相当頭が切れる人ですよね。いろんなルート

持ってるし。すごい人だなーと改めて感じさせられました。あと、マードックさんの

人の良さが際立ってた回だったかな。藍子さんは良い人と結婚したよね。

次回は東京に戻ったいつものバージョンが読みたいな。