ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

畠中恵「もういちど」(新潮社)

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東京バンドワゴンシリーズ同様、年に一度のお楽しみシリーズ。シリーズ第20弾

だそうで。もうそんなになるんですねぇ。これだけ出ていると、さすがにネタ切れ

してきそうだなぁと思っているのですが、毎回、こうきたか!という、いい意味で

意表をつかれた展開になるので、飽きることなく読み続けられますね。今回も、

一太郎の身にまさかの出来事が降り掛かることになり、驚かされました。

妖しが跋扈する世界だから、何でもありだとは思いますけど、こういう切り口で

来るとは思わなかったなぁ。でも、ちび若旦那はいつもより更に愛らしさに磨きが

かかって、ほのぼのしちゃいました。家鳴たちと戯れる姿に癒やされた~。それに、

あの病弱だった若旦那が、健やかで元気に育って行く姿を見るのは、兄やたち同様、

私だって嬉しかったです。身体が弱いことを、いつも負い目を感じて来た若旦那

だから、元気いっぱい走り回ったり遊んだり出来るのは、本人も本当に嬉しかった

んじゃないかな。生き生きとしている若旦那を見ることが出来たのは、長年の

シリーズファンとしても感涙ものでした。若旦那の病弱な体質を、こういう形で

健全にしていく方法があったのか~、とそのアイデアに感心していたのだけれど

・・・やっぱり、そう上手くはいかないものでしたね・・・。でも、あんな形で

その健康を奪わなくても・・・と、その残酷な仕打ちに胸が苦しくなりました。

一度健康な身体を手に入れてしまったがゆえに、余計に若旦那の心中を思うと

胸が痛かった。あのまま、健康を手に入れた、という形で物語を進めても良かったと

思うけどな。若旦那=病弱というのが定着してしまっているから、その印象を

覆すことは出来なかったのかもしれませんが。病弱なのがある意味このシリーズの

ネタのひとつでもありますからね・・・。ラストの若旦那の涙が切なかったな。

いつか、本当に健康になる日が来るといいのだけれど。妖しの力でも何でも使ってさ。

いくらでもやりようはありそうなのに。不老不死の妖しの血を引いているのに、

なぜあんなにも身体が弱いんですかね、若旦那は。謎すぎる。

栄吉の結婚、今度こそ上手くいくといいですけどね。相手の女の子、かなりくせが

強そうで、人の良い栄吉は間違いなく尻に敷かれそうで心配ではありますけれどね。