ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

大倉崇裕「ゾウに魅かれた容疑者 警視庁いきもの係」(講談社)

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シリーズ第6弾。シリーズ二作目の長編です。今回の生き物はゾウ。須藤さんに

いつも美味しいお茶を淹れてくれる同僚の弘子さんが、休暇中に何者かに攫われて

しまい、須藤さんと薄ちゃんが捜査に乗り出し、その果にはラオスに飛ぶ羽目に

なるというお話。

なんか、薄ちゃんのキャラ、一作ごとに危険度を増していませんか?最初はもっと

ほわほわした、単なる動物おたくって感じのキャラだったと思うんだけど。一作

ごとに日本語はおかしくなって行くし、一作ごとに動物の為なら人間相手に何を

やっても構わない、という取り扱い注意人物になって来たような・・・。薄ちゃんを

怒らせたら、どれだけヤバいことになるのか、ひしひしと再認識させられる一作

だったように思います。一体、どんなサバイバル訓練受けて来たんだろう・・・。

薄ちゃんのおかしな言い間違いを、ひとつひとつ、いちいち取り上げてツッコミを

入れる須藤さんの生真面目さが可笑しい。中には、原型となる言葉が全くわからない

ような言い間違いもたくさん飛び出すのだけれど、その全部が理解出来ている須藤

さんがスゴ過ぎて、ある意味引くレベル(笑)。長く付き合っているお笑いコンビ

かよ、とツッコミたくなりました(苦笑)。薄ちゃんがどんなにアホなことを

言っても、それを受け止めて上げる須藤さんの心の広さには感動を覚えるほどです

(笑)。たまには、さらっと受け流してもいいのでは、と思ったりもしますがね。

長編なだけに、背景に隠された犯罪のスケールもなかなかに大きいです。ラオス

地で、象牙の密輸に関わる巨大な組織を対峙しなければならなくなった須藤さんと

薄ちゃんの身が心配になりました。終盤、二人が離れ離れになってしまった

時には、残された薄ちゃんがどうなったのかハラハラしました。日本に戻って来た

後で、明かされた事件のからくりに驚かされました。薄ちゃんの、ひとたび生き物

が関わった時の優秀さにはいつも驚かされてしまいます。ほんとに、只者ではない

人です。ビジュアルは、ついついドラマの橋本環奈ちゃんを思い浮かべてしまう

のだけれど・・・この表紙のイラストだと、その片鱗もないですね^^;

まぁ、とにかく弘子さんを無事取り戻すことが出来て良かったです。須藤さんの

職場での癒やしには、弘子さんが淹れるお茶が欠かせませんからねぇ。弘子さん

ご自身の過去にも、いろいろと闇深いものがあるようでびっくりしました。いつも

ひまわりのように明るく優しい女性で、そんな裏があるようには全く思えなかった

ので(前にそういう伏線出て来たことがあったりしたのかな?覚えてない^^;)。

今回、いつもお馴染みの脇役キャラ、日塔さんや石松さんを始め、死神刑事の

儀堂さんや福家警部補まで勢揃いで、豪華な共演となり、それぞれのシリーズ

ファンとしては嬉しい限りでした。大倉さんの警察ものは、みんな世界が繋がって

いるんですねぇ。儀堂さんはいろんな場面で暗躍してそうな気も。それにしても、

警察が偽造パスポートで入国はまずのでは・・・と思ってしまった。いくら急を

要するからってさ。そんなモノが用意できちゃう儀堂さんって何者なのよ^^;

ある意味、ほんとに一番敵に回したくない人かもしれないなぁ。

福家さんも、これからアメリカで巨大な敵と戦わなきゃいけないみたいですね。

日本からいなくなってしまうのはちょっとさみしいですけど。そちらの方も、

早めに読めるといいな。