ミステリ読書録

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長岡弘樹「教場X 刑事指導官風間公親」(小学館)

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教場シリーズ最新作。シリーズ一作目の『教場』の前日譚に当たります。少し前に

出た『教場0』の後日談というか。あれのラストを受けての作品ということに

なります。実は読んでる間は、この刑事指導官をしていた時期がいつなのか、

いまいちはっきりわかっていないで読んでいたのですよね。風間の右目が義眼に

なっているから、『0』より後の話なのはわかっていたのですが、その事件に

関しても「かつてこういうことがあった」みたいな書き方だったので、それが

どれくらい前のことなのかわからなくて。もしかして、警察学校の後でこちらの

職に就いたのかな?とかもちらっと過ぎったりして。でも、ラスト一話で、時系列

がはっきりわかりました。風間がなぜ、警察学校の教官になったのか、その理由が

わかって、ちょっと驚かされました。こんな理由で警察学校にいることになった

とは。ただ、風間自身は、この環境に置かれることをどう思っているのかわかり

ませんが・・・。自らの危険にも怯まず淡々と立ち向かう気がするので。まぁ、

優秀な風間を失うのは、警察としても大きな損失になるでしょうから、こういう

措置になったのでしょうけどね。

それにしても、刑事指導官としての風間も非常に優秀で、風間に直接指導して

もらえる教え子たちは得るものが大きいでしょうね。教え子たちは一話ごとに

変わり、実際に起きた事件を風間と共に担当することで、犯罪捜査のやり方を

風間から指導してもらう、というもの。まぁ、指導といっても、風間は本当に

一握りのヒントを与えるのみで、あとは本人に考えさせるという形ですが。

そこで真実に至らないようなら、刑事としての資質もないものとして見做されて

しまうわけで、非常に厳しいミッションとも云えます。風間に見放されると

いうことは、今後刑事としての成長も見込めないのと同じでもありますから。

新人刑事たちは、厳しいと言われる風間道場の下で指導を受けることに戦々恐々と

しながらも、一度教えを受けた生徒たちはおそらく全員が風間の優秀さに舌を巻き、

風間に指導してもらえて良かったと思った筈です。そもそも、風間の目に止まら

なければ、指導を受けることも出来ないわけで、そこで指名してもらえただけでも、

生徒としては光栄なことと捉えるべきだと思われ。新米刑事たちは、怖いと思い

ながらも、密かに自分に声がかからないかと待っている人が多いんじゃないのかな。

本書は、一作ごとに生徒役が変わる連作短編であり、すべてが冒頭に犯人の犯行が

明らかになる倒叙形式になっています。風間と生徒は、犯人がどのようにして犯行を

行ったのかを推理し、犯人を追い詰めて行きます。風間が提示するヒントをたよりに、

生徒たちがどうやって犯人に犯行を認めさせるかが読みどころ。風間は、かなり

最初の方で事件の全貌を把握しているようで、改めてその優秀さに感心させられ

ました。どの作品も、水準以上の面白さはありましたね。読みやすいから、あっと

いう間に読み終わってしまった。

しかし、表紙に初めて風間のイラストが採用されたと思うのですが・・・これ、

完全にキムタクに寄ってますよね!?ここまであからさまに寄せて来たこと自体に

びっくりしました。東野さんの福山ガリレオのよう^^;長岡さんも、よくOK

出したなぁ。意外とミーハーなところがあるのかなぁ?(苦笑)