ミステリ読書録

ミステリ・エンタメ中心の読書録です。

日明恩「濁り水 Fire's Out」(双葉社)

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消防シリーズ(というらしい。作品紹介ページで初めて知った^^;)第4弾。

久しぶりに続編が読めて嬉しかったのですが、相変わらず文章が説明くさくて

まどろっこしいなぁ・・・という印象はあまり変わってなかったですね。とにかく、

消防薀蓄が多すぎて。肝心の事件の方の話がまったく進まないので、途中さすがに

読んでいてイライラしましたね。主人公雄大の、基本的に消防の仕事に対する

やる気のなさも相変わらずでしたし。文句言いつつ、やることはきっちりやる

姿勢は好きなのですが、どうせやるなら、そこまで文句言わずにやれよな~・・・

と、ついついツッコミたくなってしまう。もちろん、消防士になったきっかけが

きっかけなだけに、単なる意地で続けているからってところは理解しているの

だけれども。でも、なんだかんだ言いながら、意地だけじゃない感じもします

けどね。雄大は、消防士としての矜持はしっかり持っていると思うし。きっかけは

仁藤さんの売り言葉に買い言葉だったとしても、結局いやいや言いながら続けて

いるのだし。辞めようと思えば、いつでも辞められた筈なのだから。ま、公務員

としての待遇に魅力を感じているからとも言っているけどさ。

しかし、今回の事件は、火事じゃなくて水難の方だった訳ですが。消防士の仕事

って、ほんとに多岐に亘っていて大変なんだなぁと思わされました。消防薀蓄は

鬱陶しいところもあるけど、日頃思っている以上に消防士の仕事はいっぱい

あるんだなぁと再認識させてもらえるという意味では、勉強になるシリーズです。

大雨で冠水した自宅の駐車場で、車の下に挟まって動けない人がいる、という

通報から始まった今回の事件。一体どういう状況なの!?と私も読んでいて

かなり混乱しました。なんで、自宅の駐車場の車の下で動けなくなる!?

結局、必死の救助にも関わらず、被害者の老女は亡くなった。被害者の遺族である

娘は、雄大たち消防士に、『どうしてもっと早く来てくれなかった。なぜ助けて

くれなかった』と暴言を浴びせた。しかし、老女の死には不審な点があり、事故死

ではないかもしれない可能性が浮上する――。

目の前で、必死に母親の心肺蘇生を行う消防士の姿を見ていたのに、あそこまで

心ない言葉を投げつける娘には心底腹が立ちました。自分は横で見ていただけの

くせに。まぁ、動転していたのだろうとは思いましたが。こういう時、人間性って

出るものなんだなぁと思いながら読んでいたのですが・・・真相を知って、

ああそういうことだったのか、と腑に落ちるものがありました。ただ、この

真相に至るまでが、さすがに長すぎた。しかも、その真相が、全く意外性のない

ものであったので尚更。犯人もそうだけど、そこに至る経緯とか動機とか、

もう少し捻りがあっても良かったと思う。正直、この真相なら、短編で出来る話

と言っても言い過ぎじゃないくらい。事件そのものよりは、消防薀蓄とか消防士の

日常のことを描く方が作者にとっては重要だったということなのかな。

以前から日明さんの文章って冗長なところがあるよなぁと思っていたけれど、

これだけ書いてもそこは変わらないんだなぁ・・・。いろいろ、書きたいことが

出て来ちゃうんだろうけど。もうちょっと、読みやすくシンプルに書いて欲しい

なぁ。雄大と守と裕二、三人の関係は好きなんだけど。裕二の攻撃的な言動は

さすがにちょっと引いてしまう。暴力はよくないよね・・・いくら雄大が頑丈

だって言ったってさ。バカバカ言うのも、親友ならではの愛のムチなんだろうけど、

事あるごとに言うことでもないと思うし。

今回は、仁藤さんの出番が名前しかなかったのが寂しかった。いつか、仁藤さん

視点から見た物語が読んでみたいなぁ。多分、彼は雄大のことが可愛くて仕方

ないんだと思うんだよねぇ。その愛情が、全く本人に伝わっていないのが哀れ。

雄大のことを一番理解して評価しているのは仁藤さんの筈。

今回紅一点として出て来た森さんに関しては全く覚えていなかったのだけど、

『ロード&ゴー』に出て来たキャラだと他の方の感想に書いてあったので、自分の

記事読み返してみて、なんとなく思い出しました。そちらの作品では生田さんに

片想いしてたみたいだけど、紆余曲折あって今回幸せな姿が見れてよかったです

(覚えてなかったくせに何を言うのかw)。

ちなみに、雄大の親友の裕二が務める武本工務店は、警官シリーズの武本の

実家とかかな?(覚えておらぬ)こういう、ちょっとしたリンクが出て来るのは

ファンとしては嬉しいですね。

近年、大雨での被害が増えているから、こういうテーマはかなりリアルに感じ

ました。雄大のように、消防士さんたちが日頃からお仕事して下さっているから、

私たちの安全は守られているのですよね。感謝の気持ちを忘れずに、防火や防水

の意識を持ち続けて行こうと思います。