ミステリ読書録

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三津田信三「赫衣の闇」(文藝春秋)

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物理波矢多シリーズ第三弾。ただ、時系列でいうと、一作目の炭坑夫時代と、三作目

灯台守との間の出来事になるようです。炭坑夫として働き、殺人事件を解決した

波矢多は、建国大学で苦楽を共にした親友の熊井新市を頼って上京した。すると、

宝生寺の闇市を仕切る新市の父・親潮五郎の弟分である私市吉之助から、

闇市に最近出没する赫衣という謎の怪異を解決してほしいと頼まれる。炭坑夫時代

に波矢多が解決した事件の話を聞いたせいらしい。お世話になっている親友の父の

顔を立てる為、引き受けざるを得なくなってしまう。新市と共に、若い女性を付け

狙う赫衣の正体を調べ始める波矢多だったが、ある日、前代未聞の猟奇殺人事件が

起きてしまい――。

物理波矢多(もとろい・はやた)シリーズ最新作。相変わらず名字の読みを、何度

ルビをふられても忘れてしまう^^;

今回は、赤い迷路と呼ばれる闇市に出没する赫衣という怪人の正体を暴いて欲しい

という依頼を解決するお話。

慣れ親しんだ人でも迷うという迷路のような闇市で起きる怪異と殺人事件。題材は

とても好みだし、捜査の過程はぐいぐい読まされてとても面白かったのだけど・・・

肝心の謎解きが・・・薄いし浅い。猟奇殺人事件の犯人は意外性ゼロだったし、

動機も首をかしげざるを得ないし。意外性はゼロなんだけど、この人物だけは

犯人であってほしくない人物でもあったしね。捜査の過程をあれだけページ

さいて書いているのに、肝心の謎解きはやたらに駆け足だったし。もうちょっと、

解決部分を丁寧に描いても良かったのでは。

しかも、当初の目的だった赫衣の謎の部分は結局解明されないまま終わったし。

えぇ。何だったの!?と思いましたよ・・・。猟奇殺人が起こった後の赫衣の

正体に関しては解明されてますけど。その前に何人かが遭遇していた赫衣は

一体何だったんでしょう。本当の怪異とでも?三津田さんにしては、解決が

ずいぶんと杜撰だなぁとちょっとがっかり。それとも、今後の作品への伏線

なのかな。

波矢多のキャラは、どうも刀城言耶と被るなぁと思っていて、どこかで

二人がニアミスするんじゃないかと思っていたのですが、案の定登場しましたね。

お互い、名前も名乗らないままでしたけれど。明らかにこの少年は若かりし頃の

言耶ですよね。この頃から、全然変わってなくて笑えました(苦笑)。

このシリーズは、必ずタイトルに色が入るんですね。黒、白、赫、と来たから、

今度は何色かな。青か緑でしょうかね。