松尾さんの作品は食指が動くと読むって感じなんですが、銭湯好きなのでこれは
読みたいと思って予約してありました。
内容は、ちょっと思っていたのと違っていたけど・・・^^;
突然存在も知らずにいた伯父の遺産の銭湯を相続し、経営することになった姉妹
のお話。姉妹の姉・莉央は真面目でしっかり者。妹の紗央は引きこもりで人と
向き合うことが苦手。幼い頃に母を亡くし、三年前に父を病気で亡くしてから、
莉央は、家に引きこもる妹の面倒を一人で見ることになった。19歳の紗央は
働きに出ない代わりに、家事全般を担っている。姉妹二人でなんとかアパート
暮らしを続けて来たが、莉央の勤める会社の事業縮小により、今後の収入は激減
するかもしれない上、莉央たちに良くしてくれていたアパートの大家のおばあさん
が施設に入ることになり、オーナーが甥に代わったことで、家賃の滞納にも厳しく
なりそうだ。八方塞がりで困っていた莉央の前に、ある日母方の伯父の弁護士と
名乗る人物が現れる。伯父が亡くなり、遺産を莉央たちに相続して欲しいという
旨の遺言を残したのだという。伯父の遺産とは、嵐の湯という銭湯で、もし相続
するのであれば、今現在の銭湯経営を続け、二人いる従業員もそのまま雇い続ける
ことが条件だと言うのだ。莉央は条件を飲み、銭湯経営を始めることに。ある日、
常連客から持ち込まれた些細な謎を解いたことをきっかけに、番台に立つ莉央の
もとに様々な客たちの謎が持ち込まれるようになり――。
前半は、姉妹が経営することになった銭湯に日常の謎が持ち込まれて、それを
番台に立つ莉央が受け、引きこもりの妹に伝えて、勘の鋭い紗央が解く、という
割りとよくあるタイプの連作短編集なのかなと思って読んでいたのですが、
次第に姉妹の周りで不穏な動きが出て来て、謎めいた従業員の存在もあったりして、
中盤以降、物語は意外な展開を見せます。うーん、まさかファンタジーの方向に
行くとは。亡くなった伯父さんがああいう登場をするというのにも面食らわされ
ましたし。謎の従業員の正体もそうだけど、ここまでスケールが大きくなるとは!
って感じ。個人的には、老舗の銭湯を舞台にした普通の日常の謎系ミステリーの
方が読みたかった気もしますけど^^;
弁護士助手の倉石は、なんとなく途中から胡散臭い人っぽいな~と思っていたので、
その正体を明かされたときは、やっぱりね~・・・って感じでした。倉石に好意を
持っていた莉央には気の毒だけれど。男を見る目に関しては、紗央の方に軍配が
上がった感じかな。
ラストは無理やり大団円に持って行ったって感じだけど、結局嵐の湯を狙う奴ら
のことに関しては、何も解決していないような。今後、シリーズ化を想定して
いるのかなぁ。
銭湯大好き人間としては、もうちょっと銭湯の良さが垣間見えるようなお話が
読みたかったかな。