マンボウやしろさん初の小説集。マンボウさんは、元芸人さんで、現在は主に
脚本家や演出家、ラジオパーソナリティ等をされてらっしゃるマルチな方。私は、
夕方料理を作りながらいつもラジオを聴いているのですが、ちょうどその夕食作り
タイムの5時から3時間、東京FMで『スカイロケットカンパニー』というラジオを
やってらっしゃるのがマンボウやしろさんです。月曜から木曜まで、大抵ご飯作りが
ある日は毎日マンボウさんの声を聴いている訳です。スカロケ(番組のことを
リスナーたちはこう略して呼んでいます)始まってから、割りとすぐに番組を
聴き始めたと記憶しております(スカロケは今年で9年目)。ただ、番組の最後
まできっちり聴いている訳でもないし、夕食作らない日は聴かなかったりもする
ので、そこまでヘビーリスナーという訳でもないのですが。スカロケは、ラジオの
中の会社というコンセプトで放送されていて、マンボウさんはラジオの中では
本部長、アシスタントの浜崎美保さんは本部長の秘書という役割になっています
(なので、放送の中では『秘書』と呼ばれています)。二人のやり取りが大好きで、
毎日聴くのを楽しみにしています。ちなみに、番組始まった当初は、マンボウさんは
まだ吉本所属の芸人さんで、あまり売れていない無名の芸人って感じの立ち位置
だったように思います。そこから芸人やめて脚本家として再スタートして、少し
づつ脚本や演出を手掛けるようになっていった経緯も知っているので、そんな
マンボウさんが、ついに小説を出すまでになったか~、とリスナーとしてはこの
本のニュースを聞いて感慨深い思いになったものです。これはもう、いちリスナー
であり本好きとしては読むしかない!と思い手に取った次第。
前置き長くてすみませんね。なんでこの本を手に取ったか、という説明を一応
しておきたくて(笑)。
で、そのマンボウさん初の小説ですが。短い掌編ばかりを集めた作品集ですが、
その全部がコロナに纏わる小説です。そう、タイトルは『頃な』と『コロナ』が
かかっているんですね。さすがもと芸人(笑)。
内容は、本当にバラエティに富んでいます。まぁ、正直ピンと来なかった作品も
たくさんありました。SF絡みや政治絡みのものも多数ありますし。でもまぁ、
コロナしばりで、これだけいろんな作品が書けるのは、やっぱり才能の現れでも
あるのかな、とも思いますね。文章は「うーん・・・?」と思う部分もたくさん
あるのですが、発想が面白いものが多かったです。思わぬ着地点のものもあったり。
個人的には、スカロケをモデルに書かれたと思われるラジオシリーズとか、
小路幸也さんの東京バンドワゴンシリーズを彷彿とさせるような心温まる
『世界一のギタリスト』とかが好きだったかな。視点の面白さでいえば
『パチンコ屋の存在意義』なんかも、ちょっとびっくりな切り口で新鮮だった。
舞台制作現場を描いた『鉄仮面』シリーズも、コロナならではのオチに背筋が
寒くなったし(笑える場面にしたかったのかもしれませんが、笑えないものが
あった)。
コロナ禍において、演出・脚本家としては様々な制約を受けて、大変な思いをされた
だけに、いろんな思いが詰まった作品集なのでしょう。闇営業を取り上げた作品も
あって、大丈夫かなぁ?とちょっと心配になったりもしましたが^^;
マンボウさんの多彩な一面が現れている作品集になっているのではないかな。
まぁ、スカロケリスナーじゃない人が読んで、どう思うかはわからないですが・・・。
ファンとしてはなかなか楽しめました。
本物のコロナウイルスでは笑えないけど、このコロナ禍を逆手に取ってユーモアに
変えて、いっそのこと笑い飛ばしてしまおう、というコンセプトなのかな、と。
コロナのあの頃な・・・と思い出話が出来る日がいつか来るようにとの願いも
込められているのかもしれない。みんなそれぞれに、辛い思いをたくさんして来たし、
今現在もしているのだから。
ちなみに、東京FMで、一日いろんな番組を回ってこの本の宣伝をする、と予告されて
いた日があったのですが、なんとその出演予定日当日、マンボウさん自身がコロナに
かかってしまい、出演出来ず無念、という元芸人らしいおマヌケなオチが。
私もこの日スカロケ聴いていたのですが、『本部長~~~!』とツッコミたく
なりました(笑)。今は回復されて元気にパーソナリティとして活躍されていて、
私も毎日元気と笑いをもらっています。良かった良かった。